ドリーム小説
宵闇 漆拾肆
「っ、せんぱああいっ!!」
大声でころころと飛び込んできたのは、水色のしのび装束に身を包んだ幼き子たち。
「わ、どうしたんだ?お前ら。」
「雅さんがいなくなっちゃったのに、先輩までいなくなっちゃったら、僕たち、僕たちっぃ・・・」
ぎゅうぎゅうとすがりつかれるそれはまるで母にすがりつくようで。
可愛い、癒される。
なんだか久しぶりな気がするその感覚。
だが、いかんせん数が多い。
庄、彦、どころか、は組のほとんどの子達がいて。
きり丸だけが少しはなれたところからこちらを見ていたが。
「大丈夫だ。俺はいなくならないよ。俺は、ここにいるよ。」
そう告げてそれらの頭を撫でてやればふにゃり、笑顔。
「庄も彦も、心配かけたな。」
「よかったです。ちゃんとここにいてくださって。」
「心配しました。いなくなっちゃってるんじゃないかって。」
ぐりぐり頭を腹に押し付けてくる彼ら。
「だいじょうぶだ。俺はここから消えたりはしない」
不確かなそれを、微かな希望を乗せて伝える。
それにとてもとてもうれしそうに笑う皆を本当にいとおしいと思う。
「あ、こら!お前ら!」
「先輩はまだ怪我ふさがりきってないからね?」
現れたのは黄緑と青。
彼らの登場にきゃあきゃあと声を上げながら一年生たちは出て行った。
「大丈夫ですか?先輩。」
「ああ。大丈夫だありがとうな、数馬。それから左近も。」
ふわり、こちらも癒し満載の笑みで。
もう1人はそっぽを向いて。
保健委員は本当に癒しだ。
なんというか、皆よく保健委員がいないのを見計らってくるよな。
さっきから抱きついてくる三之助をどうしようかと考えていればぎゅうと、今までよりも強く抱きしめられて。
「・・・どうした三之助。」
尋ねればすねたような返答。
「心配、したんすよ・・・。怪我、してるし、おきないし・・・。」
「ごめんな?でももう大丈夫だ。ありがとう。」
頭を撫でてやればぐりぐりと腹の辺りに頭を押し付けられて。
そして一言。
「・・・確かにこうしてみたらちゃんと体やらかいっすね。」
「・・・それはあれか?俺に脂肪分がいっぱいあるって、けんかうってんのか?」
いらっとした。
腕を引き離そうと引っ張るが動かない。
「そうじゃないっすよ・・・」
それだけ呟いてさらにぐりぐりと頭を押し付ける。
おまえは俺を窒息させたいのか?
そう聞こうとすれば、するり首元に冷たい感覚。
「ひゃわっ!」
驚いておかしな声が出たのに、三之助が怪訝そうに見上げてきて。
「じゅんこだ。」
ぽつりその口からこぼされた名前に、この首もとの正体を悟る。
「じゅ、じゅんこさん?」
そっと手をやれば確かに擦り寄ってくるうろこの感覚。
それに少しの安心とこそばさを覚えていればぐっと顔を掴まれた。
「・・・三之助、痛い。」
「・・・・・・。」
無理やり方向転換された首が痛む。
「三之助、近い。」
目の前の三之助との距離が近くて思わずうろたえる。
「・・・・・・俺を見てくださいよ。」
じゅんこじゃなくて。
続けてこぼされたそれになんだか笑みが漏れる。
「ちゃんと、見てるよ三之助のこと。」
「・・・そうじゃなくて・・・」
「?」
むっとした顔のままで何かを話そうとする三之助に首をかしげる。
と、
三之助がべりりと音がするほど強くはがされた。
見れば紫。
「次屋。そこ私の特等席。」
無表情で告げて、喜八郎はさっきまで三之助がいた場所に抱きついてきた。
「・・・ええと・・・?」
さてすがり付いてる喜八郎をじとりとした目で見てくる三之助。
それらをどう対処しようかと考えていれば、新たな気配。
「〜〜〜!じゅんこ〜〜!」
微かに聞こえてきたそれは、の首もとの彼女を呼ぶもの。
「孫兵、こっち!」
少し声を張り上げて告げれば、気配はすごいスピードでこちらに近づいてきた。
「じゅんこおおお!!」
すごい勢いで入ってきた孫兵はこれまたすごい勢いでじゅんこに抱きついた。
「心配したよ!どこに行ってたんだい?え?なに?私に心配して欲しかった?・・・ばかだなあお前・・・。」
そのまま会話を交わしていたかと思えばはた、とと目が合って。
「・・・・・・先輩、どうされたんですか?その状態・・・」
そうして今のの状況に気の毒そうに声をかけた。
『俺をっ、っっわたしを、あの世界に帰してよぉっ!!!!!!』
その言葉は先輩の真実。
だから帰ってしまうのかと思った。
でも、帰らせたくないと思った。
目覚めたということを数馬から聞いて、急いで先輩に会いに行ったのが朝のこと。
ようやくたどり着いたとき、太陽は昼の位置にあったけど。
医務室の前で思わず立ち尽くす俺に、優しく入ってこいと声をかけてくれて。
そして、
先輩の体に抱きついた。
その腰に腕を回せば、細くて。
壊れそうなそれをさらにぎゅっと強く抱く。
と、頭上から先輩の声。
「心配、したんすよ・・・。怪我、してるし、おきないし・・・。」
それに正直に返せば苦笑する気配。
「ごめんな?でももう大丈夫だ。ありがとう。」
頭を撫でられる感覚があったかくてさらにぐりぐりと頭を押し付ける。
そうして気づく。
確かに
「・・・確かにこうしてみたら体ちゃんとやらかいっすね」
ポロリ零れた声に、先輩の怒ったような声。
「それはあれか?俺に脂肪分がいっぱいあるって、けんかうってんのか?」
「そうじゃないっす・・・」
そうじゃなくて、先輩やっぱり俺とは違うんだなあと。
柔らかいしどことなくいい匂いするし、それに、今みたいにどんなに引き剥がそうとしていてもその力はそんなに強くなくて。
「ひゃわ!?」
そんなおかしな声すらも、可愛いと思った。
でもじゅんこに目が行くのがなんだか嫌で。
思わずその顔を掴む。
「三之助、痛い」
告げられたそれだけど、無視だ無視。
「三之助、近い」
そういった先輩の顔は赤い。
ああ、なんだ。
その目に俺が映ることがうれしいのも、
こうやって抱きつきたいとか思うのも、
先輩がいつも気になるわけもわかった。
俺は先輩がどうやらすごく好きみたいだ。
と、
べりり
はがされて誰かとそっちをみれば綾部先輩で。
「次屋。そこ私の特等席。」
そういって俺が今までいたところに顔をうずめた。
なんていうか、いらっとした。
というか、先輩も笑ってないで引き離してください。
危機感がなさ過ぎる・・・。
※※※
一年生と三之助。
最近出張るのは最近のブームだからだったり・・・
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