ドリーム小説
宵闇 漆拾睦
「彰義、食堂で昼でも食べないか?」
医務室から出て(思いがけずに呼ばれた呼び方に、思いのほか感動したみたいで、顔が熱かった。)さてこれからどうしようかと思っていれば近づいてきた利吉にそう誘われて。
「・・・面倒です。」
「たまにはまともなご飯を食べろ。」
正直な思いに対して、素早い切り返しになすすべなく食堂と言うところまで連れて行かれてしまった。
近づけばざわめきが大きくて、そういえば昼時かと思う。
そんななか躊躇せず入っていく利吉は結構大物ではないのだろうか。
利吉の後に続いて入っていけばざわりざわめきがさらに大きくなった。
「あ!利吉さんだあ〜!」
「こんにちは!」
「お久しぶりです」
うれしそうに水色の集団がうじゃうじゃと利吉に近づいていっていた。
「ああ、こんにちは、久しぶりだね。」
どうやら慣れているらしいその対応をただぼおと、見つめる。
と、不意に袖を引っ張られて。
そちらを見ればくりくりとした大きな瞳がふわふわした銀髪を揺らして覗き込んでいた。
「お昼、食べるんですか?ご一緒しましょう?」
「いいんですか?喜八郎くん。」
「かまいません。」
そんな短い会話の後、注文をして喜八郎くんの向かいの席に着く。
「おそいぞ!喜八ろ、う・・・?」
「お邪魔しますね。」
席に着けば喜八郎君と同じ紫色が怒ったように言ってきて。
そうして、はたりと首をかしげたあと、はっとしたように私に向き直った。
「の、お師匠さんだとお聞きしました!私はと同じ組の平滝夜叉丸といいます!」
「滝夜叉丸君だね?私は彰義です。」
「彰義さん、ですね!」
微かに緊張した様子で綺麗な髪を掻き揚げる。
その動作のとき微かに見えたその手。
そこに見えた数多の傷。
「いい手をしていますね。」
「っ!」
そっとその手をとって話しかければ動揺したようで。
「手裏剣、・・・ではないですね。戦輪ですか。なかなかいい腕ですね。」
「う、えあ・・・っ」
それに一気に顔を紅くしてしどろもどろになる。
その年相応の反応に微笑んでいれば頼んだものができたみたいでとりに行く。
そして戻ってこれば彼、滝夜叉丸君は横に居た違う紫の子と言い合いをしていて。
それを金髪の少年が止めようとしていた。
ちなみに喜八郎くんは我関せずの姿勢だ。
音を立てずにその場に座ればばっと振り向く滝夜叉丸君。
「彰義さん、っ__」
何かを話そうとしていた滝夜叉丸君を押しのけて火薬の匂いを持つ少年が現れた。
「始めまして!田村三木エ門といいます!」
その体に染み付いた火薬のにおいは火器の匂い。
差し出された手には、これまたつぶれて丈夫になった数々のまめのあと。
「はじめまして、ですね。私は彰義です。」
その手をとって握ってやればうれしそうに三木エ門くんは笑って。
「火薬の扱いには気をつけてくださいね?」
そう呟いてやれば驚いたような顔。
それに微笑んで次いで金髪の彼を見る。
体格は6年のそれ。
でも身にまとうのはやこの子達と変わらない紫。
そして私はこの子を見たことがあって。
「君は幾度かみたことがありますよ、斉藤タカ丸さん。」
「え?知っていらっしゃるのですか?」
告げれば驚いた顔。
「ええ。忍務の際に幾度かあなたの姿を拝見したことがありましたから。」
「そうだったんですか?わあ、知らなかったです・・・」
微かに落ち込んだ様子は気づかなかったことに衝撃を受けてしまったからだろう。
でも、気づかれていては私の力不足と言うことになるのだから。
「ふふ、知らなくて当然ですよ。私は忍務をしていたのですから、普通の人に気づかれてしまっていれば私は忍者失格です。」
「そうですよね・・・。あ、でもやっぱり改めまして!僕は斉藤タカ丸といいます!ちゃんにはいつもたくさんお世話になっています!」
落ち込んだ後ふにゃり笑うその様子はとても忍を目指すものには見えなくて。
その髪色のように明るく暖かい。
恐らくのほうも幾度となく助けられていたのだろう。
「こちらこそ、がたくさん迷惑かけているでしょう?お世話してくださってありがとうございます。」
交わした握手。
その手はまだ柔らかい。
それがほかの子との違い。
でも、それがどのように変わっていくのか楽しみでもある。
くいと袖を引っ張られて振り向けば喜八郎君のどこか不機嫌な無表情。
それに思わず笑いがこみ上げる。
その頭を撫でてやれば少し顔がほころんで。
どことなくこの子はと似ているようだった。
改めて食事を再開して。
そうして思ったことが一つ。
(こんなに綺麗で美麗な集団の中に居たはたいそう影が薄かったんでしょうねえ。)
※※※
長かったので、分けました。
・・・けど、そこまで長くなかったかもしれないですね。
師匠と4年生。
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