ドリーム小説
宵闇 捌拾壱
「せんぱーい!!」
「ん?どうした、四郎兵衛。」
が目覚めて約一週間。
の体はほぼ回復した。
その回復祝いを喜八郎がしてくれるとのことで、町へと降りる用意をし、門へと向かっていたとき。
後ろから名前を呼ばれて、そちらを見れば青色。
ほやほやとした空気をかもし出して走ってくる四郎兵衛。
なんとも可愛らしい。
「先輩が元気になられて良かったです!」
にこにことして言われれば、こちらも微笑んで。
「心配かけてごめんな?ありがとう。」
それにさらにふにゃり笑って。
「わざわざそれだけを言いに来てくれたのか?」
尋ねれば一瞬ほけりとした顔をのぞかせてそしてはっと何かに気づいたように焦りだした。
「先輩っ、次屋先輩を見ませんでしたか?!」
告げられた名前はあの無自覚方向音痴のもので。
「いや、見てないが・・・また、か?」
「委員会途中に一瞬目を放した隙に・・・」
どことなく哀愁漂わせあさっての方向を見る姿は達観しているといえよう。
「体育委員みんなで探しているんですが・・・」
「見つけたら連れて行ってやるよ。」
「お願いします。」
そこまで話したときに、新たな気配が近づいてきて。
そちらをみれば紫と深緑、そして水色だ。
「時友せんぱーい!せんぱーい!」
ぱたぱたと走ってきた金吾の頭を撫でてやればうれしそうに目を眇めて。
「、三之助をみて・・・ないよな・・・」
「ごめん、滝。見てない。」
あからさまにがっかりして見せた滝夜叉丸に苦笑を返して。
「どこかに出かけるのか?。」
「七松先輩。はい、回復祝いに喜八郎が団子でもおごってくれるとのことで町に下りるのです。」
どろだらけでやってきた小平太にそう返す。
「そうか、楽しんでこい!そして土産を期待しているぞ!」
にかり笑ってそうして告げられたそれに曖昧に笑う。
「さて!体育委員会、三之助の捜索をしながら裏裏山までランニングだあ!!」
「ちょ、先輩っまってくださっ___行ってしまわれた・・・。」
「・・・滝夜叉丸先輩、僕らも行きましょうか・・・」
「先輩、楽しんできてくださいね!」
嵐のように現れた小平太は嵐のように去っていった。
そうして滝夜叉丸、四郎兵衛、金吾はどことなくげっそりとしながらそれを追っていったのだった。
「頑張れ・・・。」
はそういうことしかできなくて。
さて、まだ待ち合わせの時間までは大分あるが、早く向かっておこう。
そう思い歩き出そうとすれば、図書室からぞろぞろと図書委員が出てきた。
「あ、先輩!」
「きり丸」
あの日、ともに一夜を明かしてからきり丸はを名前で呼び、よく話しかけてくれるようになった。
可愛い後輩に慕われるのはうれしい。
はじめが最悪だったため、ころころと近寄ってくるそれは余計にうれしい
「どうしたんだ?図書委員みんなで。」
「これから中在家先輩の朝顔を見に行くんです!先輩も一緒に来ますか?」
にぱり笑って告げられた言葉。
お誘いはうれしいのだが今日は先約があって。
「悪いな、きり丸。行きたいんだが今日は用事があってな・・・」
「、これからお出かけ?」
「不破先輩。」
きり丸と話していればきり丸の後ろからふわふわした髪を持った雷蔵が現れて。
「喜八郎に団子をおごってもらうんです。」
正直に言えばふわり雷蔵も笑って。
「回復祝いかな?楽しんでおいで。」
「はい。」
不意に服を引っ張られる感覚を感じる
そちらを見ればどことなくすねたようにきり丸が服の裾を引っ張っていて。
「また、今度、遊んでくださいね?」
ぽつり呟かれたそれに頬が緩んむ緩む。
「ああ。いくらでも遊んでやるよ。」
わしゃわしゃとその頭を撫でてやればきり丸はようやく先ほどのような笑みを見せてくれた。
「・・・・・・。」
「わ、中在家先輩。・・・ええと・・・」
雷蔵の後ろから長次が現れてぼそり言葉を呟く。
距離のせいで聞き取れなかったそれを聞き返そうとすればその横に居た久作が訳してくれて。
「『朝顔を見たかったらいつでも来たらいい』って中在家先輩は言っておられます。」
さっききり丸に誘われて迷っていたのを見ていたのだろう。
その言葉にうれしくなる。
「『いつでも待ってる』とも・・・」
久作の反対側に居た怪士丸が長次の影から顔を出してそう教えてくれた。
「!ありがとうございます、中在家先輩!」
「能勢と怪士丸も、ありがとな!」
手を伸ばして二人の頭をなでて言う。
そうしれば青色は顔を紅くしてそっぽを向いて。
水色は撫でられた頭にそっと手を当てて少し恥ずかしそうにはにかんだ。
「それでは今度見に行かせてもらいます!」
去り際にきり丸の頭をなでて、長次にそう言って彼らと別れた。
「じゅんこ〜〜〜〜!!」
図書委員と別れてさて、おとなしく門へと向かおうとすればどこからか探し物をするような声が聞こえてきた。
「・・・孫兵だよな、今の声は。」
そちらに向かえば地面に這い蹲る黄緑が見えた。
「孫兵。」
名を呼べばすごい勢いでこちらを見てきた孫兵。
その目はうるり微かに潤んでいて。
苦笑しながらその髪に付いた葉をとってやればしょんぼりとした様子でじゅんこのことを尋ねてくる。
「、先輩・・・じゅんこ見てないですよね・・・?」
「悪いな、見てない・・・」
そういえばさらに落ち込んで。
「ええと!見つけたらすぐつれてきてやるから、だから、な!心配するな!」
あまりの落ち込みように慌てて慰めの言葉をかければ微かに頷いたのが見えた。
さてどうしようか。
このように落ち込んだままの孫兵を置いていくのもはばかられる。
かといってこのままでは時期に待ち合わせの時間になってしまう。
そんな風に考えていたとき、聞こえてきたのは救いとも言える声。
「まごへーい!」
一番に聞こえてきたそれは、一つ上、蒼色銀髪の八左衛門のもの。
「「「伊賀崎せんぱーい!」」」
見ればその後ろから水色もころころと走ってきていて。
「・・・竹谷先輩。」
孫兵の落ち込んだ声に苦笑して八左衛門は左腕を差し出す。
「!」
そこには孫兵が愛して止まない最愛の彼女。
「じゅんこ見つかったぞ」
からりと笑うそのさまはなんともかっこいい。
「じゅんこ〜〜!」
再会の抱擁を交わす二人をよかったと思い眺めていれば頭の上に暖かい手。
ぽすぽすと撫でられて。
「も探してくれてたのか。ありがとな。」
それに笑って返す。
「せんぱーい!」
「お出かけですか??」
虎若と三次郎がにょきりと八左衛門の後ろから顔を出して。
「ああ。町までちょっとな。」
返してやれば口々に気をつけて、いってらっしゃ~いと声をかけられる。
「ありがとな。じゃあ、いってくる。竹谷先輩も失礼します。」
くるり方向転換。
と、
「先輩、ありがとうございました!」
孫兵の声が聞こえてきたのでふらり後ろに手を振って。
さあ、そろそろ時間が迫ってきてしまった。
急ごうかな。
※※※
コンセプトはみんなと触れ合おう。
・・・すでに何かしら忘れてそうだ。
back/
next
戻る