ドリーム小説










 宵闇 五十三















学園に届いた文はただ一言。


ある場所の名前が書いてあるだけのもの。


でも、それががいる場所を示すものだとわかった。



行こうとする私たちに、行かせまいとする先生方。

それを振り切ろうにもまだ私たちでは先生たちにはかなわなくて。


さてどうしようか。


隣にいた兵助と顔を見合わせれば兵助も同じようにこちらを見ていた。

「とりあえずは4年生たちは行かせてあげたいな。」

「あとは委員会の三郎と後輩たちか。」

微かに思考を巡らせて、いろんな道を考える。


「行かせてくださいっ!」


叫んだのは雅さんで。

どうしたのかとそちらを見れば泣きそうな顔を浮かべている彼女。



「もうっ、ちゃんに会えなくなっちゃうかもしれないんですっ!!」


どういうこと?そんな考えがみんなの中に湧き上がる。

でも、彼女の言葉になんとなく、なんとなくだけど意味を悟って。


は、雅さんとおんなじ世界の人・・・?」


ぽろり、こぼれた言葉にはっとするみんな。

それに泣き出しそうな顔のまま彼女はうなずいて。



ちゃんのからだ、最近透けてて、このままじゃ、ちゃんがこの世界から消えちゃうっ!」



その言葉に一番に動き出したのはやっぱり綾部含む4年生。

そしてそれに続いて三郎と学級委員長委員会の面面。


さらには三年の次屋を筆頭に体育委員。

(走り出した瞬間違う方向に行こうとした次屋を七松先輩が抱えて走り出したが。)

皆が皆走り出したそれに先生方は止めることもなく。

彼らは彼らで顔を見合わせて。

矢羽だろう。

何らかの指示を出して消えた。

その時点でようやく体が動き出して、兵助、八、雷蔵と共に走り出した。





お願いだから、一人で消えていかないで?











全力で走る走る走る。

向かう先、見えたのは雅を傷つけようとしたあの人で。

「彰義、さんっ!!」

いつもは叫ばない綾部が叫ぶ。

それに驚きながら振り向いたその人を見る。

その人は黒をまとって、その場に立っていた。

ふわり笑みは儚げで背筋が一瞬凍った。


「喜八郎君。」


なぜ綾部が彼に知られているのかそんなことはもうどうでもよく、彼がすっと指先で示した先に必死で向かった。



走り抜けた先、そこにあったのは今にも消え入りそうなほどに体中を光らせている、


「「先輩っ!!!」」


抱えて走っていた二人の後輩がの名前を叫ぶように呼ぶ。

でも、私はその名を呼ぶことができなくて。

走り寄る綾部を、ますます光を増していくをただ見ていることしかできなくて。


置いていかないで、口をついて出そうになるそれらを言わないようにするのが精一杯で。









ひときわ光り輝いた彼女は涙を流しながらふわり笑って消えた。












七松先輩に担がれて過ぎていく景色を眺めていた。

頭によぎるのは、先輩の姿で。


ちゃんがこの世界から消えちゃうっ!』


耳に響くのは、雅さんの声で。

握る手に汗が噴き出る。

七松先輩の服をしわができるほど握り締める。



「大丈夫だ三之助。」


走りながら微かに聞こえた七松先輩の声にそっと握り締めていた手を開く。

大丈夫、大丈夫。

必死で思い込んで、先輩の姿を頭に浮かべる。



そうしてたどり着いたそこ、綾部先輩が手を伸ばす。

後輩たちが先輩の名前を必死で呼ぶ。





そしてその先、彼の人は、光り輝いていた。


それがきれいだなんて思った俺はおかしいんだろうか。


その姿があまりにもきれいで、名前を呼ぶことも忘れてただ、見とれた。



その人は、


何事かをつぶやいて、


涙を流すその顔で


必死で笑って







そして、消えた。










走り抜けて、途中で彰義さんにあって、その指先の先に必死で走った。


たどり着いたその場所は何の変哲もない、ただの開けた森の中。

それでも、そこは常ではありえないほど輝いていて。


その発信源は探し続けていた、ひと


煌めき輝くその姿に、一瞬驚いて、見とれた。


でも、光り輝くと同時にその体が透けてることに気づいて


走り出した。


掴むために


この世界にとどめるために


必死で走る走る



でも、それをあざ笑うように光は増して。




手を伸ばす


彼女の頬に滴がこぼれていくのが見えた。


手を伸ばす


必死で笑おうとするのが見えて。


そんなのは必要ないから、泣き叫んで帰りたくないと、そう言って


そうすれば私はお前のその手を必死でつかむというのに。


そうすれば私はお前をどこまでだって追いかけていくというのに。



でも、それは  イ ツ カ ノ ヨ ウ ニ 


私の手をすり抜けて。




「            」




一つつぶやく声と同時に、は姿を消した


・・・?」


手のひらには何もなくて。


そこにはがいたという証拠など、何処にもなくて。




「______っああああああああああああっ!!!!」



体中が悲鳴を上げるように 叫んだ














そうして この場所から、この世界から、という存在は姿を消した

































※※※
喜八郎が泣き叫ぶ様を想像することができなかった・・・










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