ドリーム小説









 宵闇 五十五  






























あの人がいない世界。

何も変わっていないはずなのに、何かが違う気がした。


「庄左衛門。」

教室。

放課後。

いつもはみんなとサッカーとかしに遊びに校庭にいくのだけれども、最近はそんな雰囲気でもなくて。

教室に残っているのは庄左衛門と俺だけ。

「きり丸?どうしたんだ、みんなと一緒に遊んでこなくていいのか?」

心底不思議そうに首を傾げられて。

そういうところはいつも道理かと思ってため息をついた。


先輩」

その名をあげればびくりと反応する体。

正直になればいいのにと思いながら庄左衛門のそばに座る。


「正直言って俺はあの先輩好きじゃなかった。」


ぽつり言葉を漏らせば庄左衛門がこちらを見てきて。

「でも、雅さんを助けてくれたあの人は嫌いじゃない。」

「だから、あの人が消えたこと、庄左衛門ほどじゃないけど、さみしいって思ってる。俺だけじゃなくてみんな、みんな。」

「っ、くくっ・・・」

横にいた庄左衛門がなぜか笑いだして。

「なんで笑うんだよ!」

わけがわからず問いかければさらに笑いながら言われて。

「落ち込んでる相手に、その原因の人物嫌いとか、ふつう言わないよっ・・くくっ。」

なんだかせっかく励まそうかと思ったのに、やる気がうせた。


「あーもー、せっかく慰めようと思ったのに!もういい、みんなとこいってくる!」

そう言って立ち上がれば庄左衛門が笑うのをやめて見上げてきた。


「ありがとう、きり丸。元気、出たよ」


さっきとは違って優しく笑うから。

ため息をついておんなじように笑ってやった。


















どうしよう。

先輩が消えてしまってから、次屋先輩がとてもおかしい。

いつもぼおってしてるのはいつもだけど、それ以上にどこか誰かを探すように動き回るようになって。

そのたび委員会は先輩探しに代わる。

そんな先輩たちもさみしいとか言葉に出すことができないみたいで。

いつも道理、すごそうとしてる。

でも、そのいつも道理すら分からなくなっていて。

消えてしまうその瞬間を僕はしっかりとは見ていない。

ただまぶしい光がその場所一杯にあふれて、その中心に先輩らしき人がいた。

それだけしか見えなくて。

綾部先輩の声を押し殺したような泣き方に胸がすっごくいたくなって。



お願いです。



先輩、帰ってきてください。

あなたのいない学園はどこかさみしいのです。

いつかは来る別れですが、それは今じゃなくてもいいはずです。



お願いです。


先輩。

はやく、この場所に戻ってきてください。



それは切実な願いなのです。











じゅんこの首元をなでてやる。
そうすればじゅんこは優しくすがりついてくるから。

その少し低い温度に、落ち着きを感じて。

ゆっくりと目を閉じる。

そうすれば頭に浮かぶ、色々なこと。

先輩。

あの人がこの世界から消えたと聞いた。


学園に手紙が届いて、4年の先輩方、学級委員、なぜか体育委員。

そして5,6年の先輩たちが学園をとびだしていって。

事態が把握できなかった3年生から下は体育と学級以外置いていかれてしまって。

追いかけようとしても、それは先生たちに阻まれてしまって。


だから、先輩たちの帰りを待っていたんだ。


先輩を連れて帰ってきてくれるのを、待ってたんだ。


でもそれは叶わなかった。


帰ってきた彼らの中に彼の人の姿はどこにもなく


そこには紅い眼をした後輩と先輩たち。

泣き崩れて眠るようにぐったりと食満先輩に抱きかかえられて戻ってきた雅さん。

それらから、なんとなく、わかった。

あの人はもう、この場所に、いないのだということが。

雅さんが叫んだ言葉の意味がようやっと理解できて。




ねえ、あなたはもうこの世界を見限ってしまったのですか?



先輩。



するりじゅんこをなでた。








































あの日、目の前でが姿を消した。


その日から僕の片割れにも似た彼は見ていて痛々しいほどに空元気。


三郎にとっては少ない彼の世界を構成する一つ。

だからこそこの突然の別れは、彼の心に大きく響いたのだ。

変装を以前よりも頻繁にするようになった。

それはまるでさみしさを紛らわすように。

でも、その中に君の姿だけはないんだ。

三郎は君の姿だけには変装しないんだ。

以前その理由を聞いた時君に変装するのはとても難しいんだと言っていた。

それは、つまりはこういうことだったの?

君はこの世界の人じゃないから、そういうことだったの?


三郎の、の後輩たちもすごい落ち込みようで。

そしてまた彼女、雅さんも紅い眼で必死で気丈にふるまっている。

その姿は見ていてとても痛々しくて。



ねえ、気づいてる?

君が消えたということはこんなにも大きな影響をこの地に与えたんだ。

それは君が必要とされているということだよ。

君は、きえちゃいけなかったんだ。








戻ってきて、なんてことは簡単には言えない。



でも、願うのは自由でしょう?
























委員会では最近いつも以上に三之助が消えるのが速い。

それは無意識に彼の人物を探しているからだろう。

目の前で消えたというのに、それを信じられていないのだろう。

私も似たようなものだ。

がいないことをいまだ信じられないようで。

気がつけばあの紫を小さき体を探している。

それは無意識ともいえよう。

大事で大事で大切な私たちが守るべきものたち。

それがこの場所から姿を消すことなど許すものか。


この世界から消えるなど、許すものか。



姿を消したを私たちはもうこの手で触れることはできないのだろうか。

それはほぼ不可能だということは分かっている。



でも、、お前はこの世界に戻ってくるべきだろう。



だってお前を思ってたくさんのものが涙を流している。

お前のためにたくさんのものが影響を受けている。

さあ早く帰ってこい。

私達やこの場所はお前をいつでも待っている。



さっさと、この場所に戻ってこい。



















どうして?

どうしてどうしてどうして!?

あの日彼女が私に投げかけた言葉。

それは今度は私が口にしていた言葉。

どうしてあなたは行ってしまったの?

私を置いて。

どうしてあなたは帰れたの?

私じゃなくて。

どうしてあなたは今ここにいないの?




どうして、私はここに、いるの?




目の前光って消えたあなたを私は泣いて追いかけることもできなかった。



あなたが帰れたということを喜んであげることもできない。

私を責めて、怒ってください。

帰れない、この場所にまだいなければいけないということにショックを受けている私がいるのです。

この場所にいることが、苦痛と感じている私がいるのです。



どうしてどうしてあなたは___

ほとほとと流れる涙は枯れることを知らない。























※※※
きり丸、しろ、孫兵、雷蔵、こへ、雅、視点。














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