ドリーム小説
宵闇 五十六
「喜八郎。ほらなんか食べろ。」
が喜八郎の目の前で消えてから喜八郎はいつも以上にぼっとすることが増えて。
それは食べることも眠ることも忘れるくらいに。
いつかはくる別れを何の準備もせずに受け止められることはなくて。
突然すぎたのだすべてが。
という存在は小さくはなくて。
という存在は必要で。
という存在は大切で。
でもはきっとそれに気づいていない。
自分という存在がそこまで人に影響を与えるものだとは思ってはいなかった。
だからこそ自らが傷つくことも恐れずに、だからこそ最後に泣きわめくこともなく笑って見せたのだ。
なんて愚かでそして愛しいのだろうか、あの子は。
なあ、お前はこの世界をどう思っている?
彼女は、雅さんは、この世界を恐れた。
人を傷つけてそうしてでしか生きれない私たちを怖いとでも私たちを愛しいと笑ってくれた。
でも、なあお前から見たら私たちはどんなものだったんだ?
この世界は恐ろしいものだったのか?
傷つけ傷つけられそうして自らの生きる道を作り出す。
この場所は、お前にとって居心地のいい場所だったのか?
尽きない疑問にこたえてくれるお前はこの場所にはいない。
がいない
その世界はこんなにも静かで無防備だ。
さらり流れる風に髪を弄ばせたままで。
授業があった気もするけど今はそんなことどうでもいい。
ただ、心に開いた穴をどうにかして埋めるのに必死で。
否、この隙間は埋まる気がしない。
「っ・・・」
名前を呼べば、ほろりほろり
意図しないうちに涙が溢れて。
先ほどご飯を持ってきてくれていたらしい滝の声すらあまり残っていない。
ねえ、。
どうしたらこの場所に戻ってきてくれるの?
ねえ、。
どれくらい名前を読んだら返事してくれるの?
ねえ、。
いつになったら私の名前を呼んでくれるの?
ねえ、
『っ、きはちろぉ!!!!!』
振り向いたそこ、誰もいないそこからきこえた声は、本当?嘘?
見えない姿手探りの私。
ねえ
私は今度こそその手をつかむことができる?
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