ドリーム小説
宵闇 喜八郎11
たどり着いたそこ
交戦していたのは
大事な思い人と
大好きな師匠だった。
「喜八郎っ!」
思わずくないを投げればそれは彰義のものにあたって。
駆け寄っていけば驚いた顔をしている喜八郎。
そんな喜八郎を背にきっと彰義を睨んだ。
「師匠何をしてるんですか。」
ぎゅっと汗が出る手を握り締めて問う。
それにはあ、と一つため息を吐いた彰義。
「まったく、私は悪ものですか・・・。」
そしてそっと伸ばされた手がの頭に乗せられた。
「師匠?」
それにきょとりと首を傾げれば仕方なさそうに再びため息。
「喜八郎君。」
をなでながら呼ぶ名前は喜八郎のもの。
「を泣かせることは許さないからね?」
話が見えないからすれば黙っているしかなくて
と、
「わかってますよ」
びりりと音がするほど強く引き寄せられて気がつけば喜八郎の腕の中。
背中に感じるぬくもりに体温が上がる。
目の前に育ての親がいることにさらなる羞恥を覚え、ばたばたと暴れるが蛸壷掘りによって鍛えられた喜八郎はびくともせず。
「じゃあね、。」
そう言ってふわりもう一度笑って彰義は姿を消した。
「・・・」
「・・・」
「ええと、喜八郎?」
無言に耐えきれなくなって声をかければぎゅう、と腕の力が強くなった。
動けないままで、どうしようかと思案していればそっと頭に手が乗せられて何かが付けられる気配。
外れた手になんだろうと自分の手をそこにやればしゃらりとなる髪飾り。
『・・・喜八郎さんは私と一緒にいるのに他の人への贈り物を選ぶのですわよ。』
頭に浮かんだ結縁の言葉。
体がぼっと熱くなる。
「ねえ、。」
そっと呟かれる言葉は緊張しているようでいつもより小さい
「私のこと、」
「好き?」
後ろから耳元でささやかれたそれに
頭が真っ白になって
でも、無意識の中それの答えだけはわかっていたからこくん、と頷いた。
それに後ろの気配が嬉しそうに変わるものだから、こちらまで嬉しくなって。
「じゃあ、私のこと好きって言って?」
次いで聞こえたその発言にかたまってしまった。
好きで好きでたまらないくらい好き
あなたが誰かと出掛けていると悲しくなって嫉妬して
すごく醜くなる
それでも、好きという気持ちは嘘じゃなくて
すき
ただその一言なのに言うのが恥ずかしくてたまらなくなる。
後ろの喜八郎はただただその言葉を待っていて。
ああ、もう!
ぐっと心を決めて、振り向く。
少し驚いた喜八郎の首に手をまわして耳元に口を近づける。
そっと小さく、聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた。
「好き、だよ、喜八郎」
その瞬間さらに強くなった腕の力がを強く強く抱きしめた。
「すき、すき、すき、大好き、。」
耳元で何度もささやかれるその言葉。
甘い甘い砂糖菓子のようなそれ
ああ、もう俺は喜八郎から離れることなんてできなさそうだと思った。
すき、すき、だいすき
バカの一つ覚えみたいなそんな言葉だけど
本当に本当に
だいすきなんだ
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