ドリーム小説
宵闇 喜八郎4
「、この書類を作法に持って行ってくれ。」
学級委員長委員会室に入った瞬間、珍しくも修羅場を迎えていたその部屋。
こちらを見ることもせずに三郎はそう言ってに何かの書類を放り投げた。
と、いうことで作法委員会室の前にはいた。
さっさと中に入って書類を渡して三郎たちのところにもどらないとと思っているのに体が動かなかった。
「なら、これをこうしてはいかがです?」
「じゃあ、これをこっちに。」
目の前の部屋の中から聞こえてくる女の子の声に。
それに答える喜八郎の声に。
「?」
不意に開いた襖。
そこには不思議そうにを見下ろす仙蔵の姿。
「あ、とこれ、学級委員からの書類です。」
「ああ、ありがとう。」
礼と共に持っていた重みがなくなって、前が見やすくなる。
それによって部屋の中で話し合いをしていた様子が見て取れて。
「?」
「あ、先輩!」
喜八郎や兵太夫たちがの名前を呼んで。
そしてその横で無表情にも近い瞳でを見る一対の瞳に体が微かに震えた。
「それじゃ、俺はこれで・・・」
そう言って部屋を去ろううとすれば仙蔵に腕を掴まれた。
「もう少しゆっくりして行け。茶でも出してやろう。」
いえ、急ぎますので、その言葉は仙蔵に引っ張られることで意味をなくした。
「ではさっそく仕掛けてまいります。行きましょう?喜八郎さん。」
「うん。」
それと入れ違うように結縁が立ち上がり喜八郎に声をかける。
喜八郎さん
あの甘い声が喜八郎の名前を呼ぶのがどうにもいたたまれなくてそっと目をそらした。
「僕たちも行きたいです!」
「僕もぜひ!」
「僕もいいですか?」
それについていくように後輩たちも立ち上がりでて行ったためこの場所に残ったのはと仙蔵だけになった。
「さて、。」
仙蔵が茶を出してきての前に置いたと思ったら話し出された言葉達。
「何があった?」
それはまっすぐにに向く問いで
「なに、がですか・・・?」
何のことを言っているのかわからない、そう言う顔をして見せたのに、仙蔵はにやりとてもとても楽しげに笑った。
「私に隠し通せるとでも?」
「ふむ、結縁と喜八郎か。」
「・・・」
あの夜滝夜叉丸に行ったように濁して隠して離したというのにあっさりとその相手はばれてしまって。
「確かに結縁ならばそのようなことも口にするだろう。」
喜八郎たちが出て行った襖を見やりながら仙蔵は続ける。
「結縁が喜八郎のことを好いているのははたから見ていてわかりやすいが」
「喜八郎自身も相当わかりやすいと思うのだがな。」
喜八郎がわかりやすい。
それには一部賛同できるのだが、残念ながらには喜八郎が誰を思っているのかわからない。
たったひとつわかることといえば自分ではないであろうことだけ。
「喜八郎にとっても結縁は確かに話しやすい相手だろうな。」
愉しげに口をゆがめる様ははっきり言って悪趣味だ。
「女の中では結縁に対しては心を許しているように見えるからな。」
仙蔵から出てくる言葉一つ一つに心が鈍い音を立てる。
ずきずきずきずき
痛むのを知らないふりで押しのける。
「だがな、。」
不意に感じた視線。
見上げれば先ほどとは違い柔らかく笑う仙蔵がいた。
「喜八郎は彼女以外にもっともっと心許す女の子がいるのだよ」
さて、誰だと思う?
そんなことを言われたってわかるわけないというのに
そんなことを知ったところで自分には勝ち目がないとわかっているのに
学級委員長委員会室に戻る途中。
たあこちゃんを制作する喜八郎とそれに声をかける結縁を見かけて、
心臓が痛くて痛くてたまらなくなった。
そうか、これがあの人が言っていた好きという気持ちなのか
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