ドリーム小説






宵闇 喜八郎8
















「好き、なんですの。」


笑っているのに泣きそうに言うものだから、答えは決まっているというのに咄嗟に口が開かなかった。







結縁に頼まれて休日に出た街。

女の子が好みそうなお店で様々な情報収集。

その時目にとまった紫色の蝶の髪どめ。

それがあまりにも綺麗で、に似合うだろうなあと思って。

気がついたら購入していた


そして、実習内容をこなした後お茶をおごるということなのでお言葉に甘えて寄った甘味処で告げられたのはそんな言葉だった。


ふわり笑う結縁は自分から見ても綺麗の部類に属すると思う。

思えどもそれが恋愛感情かと問われれば否で。

自分が思うのは彼女ではなくて


「わかっていますのよ」


未だ口を開かなかった私に呆れたように言葉を発した結縁。


「喜八郎さんが誰を見ているか、なんて。」

「それでも、言っておきたかったのですの。」

困ったように、その笑みは優しさにあふれていて。

ああ、本当にこの子は私のことを好いていてくれたのだなあと思った。


「女の子と二人で街に出てるというのに、他の子への贈り物を買うなんて、本当無神経なお人。」


怒ったように言うくせに、眉は下がって、いまにも泣きそうで。


確かにきれいだと思うそんな表情も、心動かされるのは一人だけなんだ。


「ごめんね、ありがとう」


そう返せば満足そうに結縁は頷いた。


「さっさと彼女とくっついてくださいませ、喜八郎さん。」

「そうしてくれれば私はやく諦めがつきますから。」

それは言外にまだあきらめていないというものが含まれていて。


でも、でもねえ


「そうできたらいいけど、がどう思ってるかわからないから。」


それにあっけにとられた顔をした結縁に私が驚いたそんな表情見たことなかったから。


「喜八郎さん、あなたの眼は節穴ですの?」


あきれた、そう続けた意味がわからない。

さんはあんなにも喜八郎さんのことを思ってらっしゃるのに。」

気づかないので?


それにどくん

胸が鳴った。


それは本当のことですか?

嘘じゃない?


私はに思われていると

うぬぼれてもいいの?


そう問えば緩やかな笑みが鮮やかな弧をえがいた。


「女の勘を舐めないでくださいませ。」


それを聞いたらいてもたってもいられなくなって。


「帰りましょうか。」


結縁の言葉にすぐさまうなずいた。



はやくはやく伝えたいから


はやくはやく逢いたいから














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