ドリーム小説





宵闇 三郎11









じんわりと落ちる沈黙。

三郎は依然として視線をさまよわせてを見ない。

見られないことにつきりと痛みを覚えながらも言わなければという思いにせかされる。

「三郎先輩」

そっと呼べばゆるり視線が廻りを映す。

それだけで胸が温かくなる。



「三郎先輩」

あの時も告げたそれを

「俺は三郎先輩のことが大好きです。」

今度はもっともっと溢れそうな気持に乗せて伝える。

仮面の向こうの顔はわからないけれど確かにに意識を向けていて。

「たとえ先輩が嘘だとののしろうと」

あの時のことはいまでも心に影を落とすけれど

「たとえ先輩が必要ないと言おうと」

また言われたらと恐怖で声が震えるけれども

「たとえ先輩が迷惑だと顔をしかめようと」

それでも伝えずにはいられない。

言わずにはいられない

「俺は三郎先輩のことが、大好きです。」

想い

、」

名を呼ばれた。

低くて耳に温かい声で。

手を掴まれて

引き寄せられて

きしむほど強く抱きしめられて

息がとまるほど嬉しくなった

掴んでいて、俺の恐怖が消えるように



「はい、三郎先輩」

何度も呼ばれる自分の名前がこんなに愛しい。

「すまなかった。」

謝罪の言葉など別に要らない。

それ以外にほしい言葉があるから。

でも、その言葉を今くれるはずがないとわかってもいて。

「私はここを出れば忍びになる」

小さな言葉がそっと呟かれて

「闇の世界で生きて行く」

これからのことを思うと怖くてたまらなくなる

「それでも、その場所にお前がいればと思うのだ」

ぐっと力が強くなった。

背中に回した腕でそっと服をつかんだ。

「なあ、。」

「私は先に卒業する。

   私を追いかけて来てくれるか?

    私を見つけてくれるか?」


その言葉に、胸が熱くなって

涙がこぼれそうになった。

のぞきこまれた顔。

いつの間にかいつもの顔で。

その言葉はが追ってきてもいいと、

傍にいてもいいと許す言葉。

ふにゃり、泣きそうに笑った

「俺だってすぐに卒業します。」

「ずっと追いかけます。」

「絶対に見つけます。」


三郎の顔が微かに歪んで笑った。


「三郎先輩、俺からもお願い。」

「俺の顔にならないで。」

「俺を記憶だけの存在にしないで」

という存在を記憶の中だけのものにしないで。


その願いに三郎は優しく笑ってくれた。





大好きです

だけじゃ伝わらないくらい大好きなんです。

あなたがどんな姿になってても

あなたがどんな声になってても

絶対に見つけ出します

絶対に探し出します。


待っててください


三郎先輩


















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