ドリーム小説








宵闇 三郎2




















襲撃


あの事があってから学園は変化を遂げた。


委員会はより実践に備えたものになり

後輩たちは足りない力を補おうと鍛錬に明け暮れるようになった




そして俺たち五年の中でもいくつかの変化があった。

たとえば兵助は火薬についてより一層敏感になった

たとえば雷蔵は今まで以上に図書館の中の本を読みあさるようになった

たとえばはっちゃんは委員会で飼育している動物たちを戦で実践的に使うように訓練している


そして



三郎は今まで以上にまねることが増えた。

それは雷蔵だけでなく、後輩も先輩も同級も

そして、彼が今までほとんど姿を変えることのなかったにも



まるでまるで

記憶に存在を焼き付けるかのように。



三郎がおかしいことにはすぐに気がついた。

でも、どこが、ということがはっきりとつかめなくて。


『三郎が僕以外をまねることが増えた。なんだか忘れてしまわないように、覚えていられるかのように。』


三郎がいない時集まった五年の中で雷蔵がそうぽつりとつぶやいた。

そこでようやっと俺たちは三郎の違和感の正体に気がついたんだ。





三郎は恐れているのだ

この場所から去る時が来ることを。

三郎は恐怖しているのだ

皆のことを忘れてしまうことを


だからいつも以上に顔を借りて自らの記憶に、技術に焼きつける。

だからいつもしないの顔だってする。

忘れてしまわぬように。










「勘ちゃん先輩、三郎先輩が最近おかしいんです」



委員会でが何か悩むような表情をしていたから問えば三郎がおかしいとのこと。

この子が気がついたことにびっくりはしたけれどなんだか納得もできてしまって。

ただ少しだけ、俺たちですらそれに気がつくのに時間を要したのに、なんだか悔しいなあと思った。



「すごいね、は。三郎のあれにすぐに気がついた。俺たち五年も、雷蔵でさえも違和感の招待にはなかなか気付けなかったのに。」

そう言って笑えば何処となく気まずそうな表情。

「きっとは三郎のことをとてもよく見てるんだね。」

俺の言葉に少し顔を赤らめて、視線をさまよわせる姿はとても可愛らしい



「ねえ、。お願いがあるんだ。」

そんなだからこそお願い


「三郎のことをこれからも見ていてほしい。」


三郎という存在を見失わないで


「俺たちだけじゃどうにもならないことがあるんだ」


親友という立場だけでしかない俺たちでは補えない時があるんだ。


「俺たちだけじゃできないことがあるんだ」


三郎が唯一他の後輩と違う瞳で見つめるきみだからこそ


「だから___」


三郎が唯一俺たちのほかに自分への侵入を許した君だからこそ



「もちろんですよ。言われたからではなくて、俺は三郎先輩が大好きですから。だから、ずっと見てるんです。」


響いた言葉

のまっすぐな瞳。



驚いて見つめれば先ほどとは比べ物にならないくらいに赤くなっていくの顔。


「っ、せんぱ、これはっまったくそういう意味ではなくてですね、ですからその先輩後輩としての好きといいますか、とりあえずそのですねっ」


必死で言い訳をすれどもそれじゃ墓穴を掘っている。


つまり、そう

君は___


ああ、なんて不器用なんだろう。

この子もあいつも


いつか離れてしまうのだからと何も言い出さない三郎


自分の気持ちを自覚しきれずにわからないままでいる


そんな二人だからこそ、幸せとはいかなくても気持ちをわかり合ってほしい。


こんな時だからこそ

こんな時代だからこそ




しかたないそっと背中を押してやるか。




「ありがとう。」

「三郎のことをお願い。」

「三郎がこの場所にいる間はせめて温かな時をすごせるように」


君と一緒に

その言葉を隠して
















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