ドリーム小説
宵闇 三郎4
「、何があったの。」
授業が終わって部屋に戻る途中。
疑問でなく肯定で尋ねる喜八郎がらしいなあと思った。
あの日から、なんとなく、三郎が好きなのかと思うようになって。
それに気がついたらいつも彼を探している自分がいたことにも気がついた。
そんな女の子の思考に戸惑って、焦って。
三郎の姿を見つけたら頬が緩む自分がいる。
気がつかれないようにと慌てて表情を取り繕い
また違う顔に変わった三郎を見て
不安な気持ちになる。
まあ、それらを気がつかれないなどと思っているのは甘い考えなのだが。
「、私も気になっている。話せ。」
喜八郎だけでなく滝夜叉丸もそう言ってきて。
でも、こんな気持ちを簡単に話せるものではなくて。
「ええと、」
「じゃあ、喜八郎の部屋にお饅頭持っていくね〜」
「なら僕は茶を持って行こう。」
気がつけばいつもの四年が勢揃い。
四方八方を囲まれて逃げることもできずに喜八郎の部屋へと強制連行された。
「三郎先輩がいつもと違う?」
問い詰められ饅頭を人質に取られれば答えるしかなくなって、発した言葉にきょとりと不思議そうな顔が三つ並んだ。
(ひとつはむすりとしている)
「いつもと違うって、どういう風に?」
こてりタカ丸が首をかしげる。
何ともかわいらしい仕草である。
「変装の回数が、増えた。」
もごもごと饅頭を口に詰めながらは答えた。
「いつもと変わらないように感じるが?」
滝夜叉丸がそう言って湯呑を手に取る。
「違う」
きっぱりと述べたに皆が驚いた顔をして見せた。
「違うんだ。」
脳裏にふわりと浮かぶ蒼い色
「だって、」
その顔はいつものものではなくて。
「の顔するようになったよね」
の言葉を遮って、喜八郎がそう言った。
「の顔?」
三木エ門の問いにこくりうなずく喜八郎。
「今までほとんどしてなかった。でもあの襲撃の後からよく見るようになった。」
喜八郎の言葉に記憶をたどりだすそれぞれ。
「なんでまた・・・」
三木エ門の言葉に各々が口を開いた。
「変装の腕を磨くためではないか?」
「もっともだと思うけど、それだけなのか?」
滝夜叉丸がポツリつぶやいたそれに三木エ門が答えればぴしり空気にひびが入った。
「ほう、そう言うということは何かほかの理由をあげてみろ三木エ門!」
「いきなりつっかかってくるな!もしかしたらもっと深い理由があるかもしれないだろうが!」
「だからそれはどんな理由だと言っているのだ!」
先ほどまでの静かな空気とは一転。
いつもの喧騒が戻った部屋にが苦笑いを落とした。
「ねえ、ちゃん」
お饅頭を再び口に詰め込んでいればそっと髪の毛が触られて。
そのまま優しく梳かれる。
「その理由がわからなくてずっと悩んでたの?」
それに一つうなずけばそっか〜という返事。
「三郎君は以前よりもいろんな顔になるようになったんだね。」
「そして今までしていなかったちゃんの顔にも頻繁になるようになった。」
「僕が思うにはね、記憶に刻みつけようと知れるんじゃないかなあ」
「刻みつける・・・?」
「うん。忘れてしまわぬように。覚えていられるようにって。」
それを聞いた瞬間の中で言い知れぬ気持ちが生まれた。
いやだ
生まれた気持ちが言葉を持って、ただ一つ明確に想いを伝えた。
「。」
ずっと黙ったままだった喜八郎がそっとをよんだ。
それに視線を動かせばとても真面目な顔をした喜八郎がいて。
「鉢屋先輩、今夜から一人で任務に行くらしいよ。さっき仙蔵先輩が言っていたのを聞いた。」
その言葉を聞いた瞬間居てもたってもいられなくなった。
「いってらっしゃい」
ふにゃふにゃ笑ったタカ丸とむすりとした表情で手を振った喜八郎。
三木エ門と滝夜叉丸の喧嘩の声を背景には走り出した。
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