ドリーム小説



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宵闇 三郎6














が涙を流しながら何も話さないでいるのに五年生たちは温かかった。

勘右衛門はそっとを撫でていて雷蔵はお茶を八左衛門はお菓子を用意していた。

兵助も部屋に置いてある豆腐のぬいぐるみをに手渡していた。

ぬいぐるみを抱きしめながらほとほとと涙を流し続ける

そんなに初めに声をかけたのは八左衛門だった。

「ほら、お菓子だ。好きなだけ食べろよ?」

笑っているのにその顔はどこか陰りが見えた。

。お茶飲んだら落ち着く。」

兵助が渡してきたお茶を口に持っていく。

温かなそれに涙が止まるのを感じた。


、ごめんね?聞いてたんだあの時。」


勘右衛門がそう言って切り出した言葉もどこか遠いことのようで一度だけ頷いて先を促す。


「あれは三郎の本心じゃない。」


雷蔵の言葉に急速に記憶がよみがえった。


「で、も、俺の気持ちは贋物だってっ」

ぼろぼろぼろぼろ止まったはずの涙が再び容赦なく溢れだす。

「それは三郎が決めることじゃない。ねえ、それは偽物の気持ち?」

兵助の言葉に熱いものが溢れる。

頭を横に振って振って。

本当じゃないわけがない。

だってこんなにも思うだけで胸がいたい。

でも姿を思うだけで嬉しい。

名前を呼ばれると嬉しくなる。

自分だけを見てほしいと思ってしまう。


でもだけど


「っ必要ないっ、て」


あんなにも冷たい瞳で言われてしまったら

拒否されてしまったら、もうあの目が向かないんじゃないかと思ってしまったら、


「不必要なものなんてこの世界には何一つないよ?」

やんわりと雷蔵の言葉。


それでも、怖いのだ


「迷惑、だってっ・・・!」


確かにあの時あの人は___



「でも、嫌いとは言われてないでしょ?」

ふわあり

勘右衛門がそう言ってほほ笑む。


その笑みに見とれていれば八左衛門がぽつりとつぶやいた。

「怖いんだよあいつは。」

「こわ、い・・・?」

の聞き返しに頷く四人。

「突然、あんなことが起こることを忘れてしまっていたんだ。」

記憶に新しいあの日。

「こんなにもこの学園が温かいものだから。」

危険があることを忘れてしまっていた。

「危険とはほど遠いものだから。」

あまりにも平和なこの箱庭の中で。

「だから三郎は恐れてる。何かを失うことを。」

兵助がを見て言った

「それを失うことによって弱くなる自分を。」

八左衛門は眩しげにをみて。


「だからね。お願い。」

微かに微笑んで雷蔵が言った。


「あの馬鹿にさっさと気づかせてやれ。」

八左衛門がいつものように笑う。


「ここはまだ戦場ではないと。怖いなら守ればいいのだと。」

兵助が目を伏せて言う。


「失うことを恐れる前に手に入らないことを恐れろと。言ってやりな、。」

勘右衛門が楽しそうに笑うものだからこちらまでそっと笑みが漏れた。





すぱん


「・・・」

突然泣いた襖の向こうにはふわふわ銀色

「あはははは・・・」

ほにゃりと金色

「・・・まったく」

呆れた一人に

「・・・本当に・・・」

苦笑する一人


「帰るよ




勢揃いの四年生にさっきよりも大きな笑みが漏れた。












※※※
四年生はが泣きやむのを五年の部屋の前で待ってました。















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