ドリーム小説



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宵闇 三郎9









目を開けた瞬間、思い切りしばかれた。

それは同じ顔をした大事な友人に。

幸いなことに仮面がとられることはなかったようだけれどしばかれた頭は痛く体中もひりひりと痛む。

「こんの、馬鹿三郎っ!」

「ちょ、らいぞ、いたっいたい!」

涙目の雷蔵に叫ばれてしばかれて。

でもそれは安堵からのものだとわかっているから強く出れない。

「ひどい怪我だな」

「ちょ、やめろ兵助!まじ、まじでいたいから!」

淡々と述べる兵助はあえて私の傷口に触れる。

しかもべたべたと遠慮なく。

「さっさと直せ。」

「そういうなら寝かせろ八左衛門!」

笑いながら布団を引っぺがす八。

ちょ、寒い、血がないからかいつもより余計に体温が低い。

助けを求めるように勘右衛門をみればじろりと睨まれて

「どうせのことを考えててとちったんでしょう?」

そう言われた瞬間体から痛みが消えた。

怪我の痛みでそれから考えをそらしていたのに。

本当にこいつはこいつらの中で一番非情だと思う。

そ向けたい現実をありありと突き付けるのだから。

意識が勘右衛門に集中する。

あの子に関する情報を、あの子を傷つけたにもかかわらず知りたがる自分がいる。

泣いてたよ。」

じとりとしためで告げられる言葉達。

「いいの?このままで」

そう言うということはもう完璧にばれてるわけで。



「なくすのが怖いからって手に入れるのを恐れるなんてただのバカだ。」



勘右衛門の言葉が深く刺さる。


ああ、もう、本当にこいつはなんでこんなにも鋭い?


はちみたいに気がつかないでいればいいのに

雷蔵みたいに優しく触れないままでいいのに

兵助みたいに見て見ぬふりでいいのに


本当にこいつは、非情で、それでいて誰よりも優しいんだ。



手に入らないのは嫌だけど

手に入ったものを失うのはもっと嫌なんだ

それならば手に入らないままでいた方がいい


そう思っていたのに、それは間違いだとただのバカだとさげすむような眼で言われて。


「自分でもわかってるよ。バカだってことぐらい。」


目を覆って小さな声で返す。


「けど、怖いんだよ。」


微かに驚く気配。

どんなに恐れていても口に出すことはしなかった私がそう言ったことにびっくりしたのだろう。

自分自身でも驚いているのだ。

こんな自分の変化に。

あの時意識が薄れながらもこの場所に帰ってきたのは雷蔵たちに会いたいというのも確かにあった。

後輩たちを残して行けないというのもあった。


でも一番はあの子に謝らなくちゃということで。



「なあ、三郎。そうやって怪我して帰ってきたことでにも同じ気持を味あわせたこと、理解してるか?」

「っ、」


きっぱりと告げられたはちのそれに、どくりと胸が大きく音を立てた。


「三郎が怪我して帰ってきて、からしたらどんなに怖かっただろうね。」


雷蔵が続けて口を開いて


「迷惑だって言われたままそのままで二度と会えなくなったかもしれない。」

兵助の淡々とした言葉が余計に心音を速めた。


「三郎。」


促すように私を呼ぶ勘右衛門。




「このままで、いいの?」

先ほどと同じ問。

でも答えはもう出ていて。



「いいわけ、ないだろう!」



がばり痛む体を無視して起き上がったそこには笑顔の四人と居心地悪そうなだった。
















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