ドリーム小説
宵闇 三之助10
委員会の最中。
山中に蔓延したいやな気配。
それにいち早く気がついたのはもちろん小平太先輩で。
次いで滝夜叉丸。
そして、俺。
じり、と視線を低くした小平太先輩の顔はにやりとても楽しげで。
それを横目に見た滝夜叉丸の顔は一切の表情がなかった。
「しろ、金吾、三之助と共に学園に戻れ。」
「三之助二人を頼むぞ。」
交互に告げられたそれにようやくおかしな何かに気がついた二人。
それを落ち着かせるように頭を撫でてやれば恐れていた瞳がまるで使命感を帯びたようにきっと強くなった。
「行くぞ。」
小平太先輩のその言葉を合図に動き出した俺たち。
先輩たちは俺たち、学園とは正反対へ。
俺たちは学園へ。
そして逃走劇は始まった。
走って走って走って。
両手をふさがれるのはあまりいいことではないので金吾の手を握る。
もう片方の金吾の手はしろに。
何度かいやな気配を見かけそのたびに方向を変えて。
でもついに見つけてしまったその敵の姿に、駄目だ、と思った。
だって、そいつらは赤く紅く色ずいた刀を楽しげに「何か」に振り下ろしていて。
落ち武者であろうその者たちの目がふいに俺たちを貫いた。
「っ、しろ、金吾と共に学園に走れ!後ろを向くな!」
握っていた手を離して思い切り突き飛ばす。
「っ、三之助先輩っ!」
「さっさと行け!」
叫んでそうして、くないをもってその場に構えた。
愉しそうにいやな笑みをうかべて近づいてくるその姿に吐き気がした。
刀とくない
その差は大きいかもしれない。
けれども速さでは負ける気がしない。
さわり
風が吹いた
同時に辺りに広がった柔らかな気配。
「っ、三之助っ!」
聞こえたその声に、敵の前だというのに振り向いて
世界が光に満ち溢れるというのはこのことなのだろうか
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