ドリーム小説







宵闇 三之助2
















委員会の途中。

長い間体を動かせなかったからか思うように動かないからだ。

気がついたら皆迷子になっていた。

「まったく、金吾や四郎兵衛ならわかるけど滝夜叉丸と小平太先輩もかよ・・・」

ポツリつぶやいて皆を探しさ迷い歩く。

「まじで帰ったら自主練しねえと・・・」

さ迷い歩いてどれほどか。

そんなに動いてる自覚もないのにいやに息が切れる。

ふは、と一つため息を吐いて木の幹に背中を預けた。

見上げた空は青く蒼く。

吸いこまれそうなほどに美しかった。


そう、それはまるで、まるで___






「みつけた、三之助」


その声が聞こえた瞬間、名前を呼ばれた瞬間

「・・・先輩」

思っていたとおりの人が現れたことに驚きが走った。



「委員会で突然いなくなったから皆探していたぞ。」

「滝と俺と七松先輩で探してる。」

「ほら帰るぞ?」

そう言って手を差し伸べてくるもんだから、心臓が大きく音を立てて。

思わずつかんだその手を引っ張った。

「うあっ、」

突然のそれにびっくりしたのだろう。

声をあげた先輩が、それすらもいとおしく感じられて。

「なんか、皆迷子になってるんすよ。」

俺はちゃんと歩いてるのに、なんか皆すぐにいなくなる。

そう告げれば微かに笑い声。

むすりとしてその顔をのぞけば楽しげに口元を押さえてて。

「そうだな、皆迷子になってるんだな」

何が楽しいのか笑いながらそう続けるからなんだかよけいにむっとなる。

「では、俺たちが探しに行こう。」

そう言って下から見上げてきて、に、と笑う。

どくん


胸が大きく音を立てた。


けれども、



「早く帰らないと喜八郎も心配するだろうからな。」



次いであげられた名前。

その名前を聞いた時、

胸の中にどす黒い感情が吹きあがった。


「喜八郎に何も言わずに出てきたからなあ。」


立ち上がろうとした先輩の腕を再び引っ張って、腕の中に閉じ込めて。


手で先輩の頬をはさんで

こちらを向かせて。


「どうした?さんのs_っ、」


その微かに開いた桃色の唇を自分のものでふさいだ。


これ以上その名前を呼ばないように

俺だけを見てくれるように。

こんな風に抱きしめられたら、俺以外でもそんな風に笑ってるの?



後輩だからと、無意識に俺を排除しないで。




微かな空白の後、そっと外した唇。

閉じていた目を開ければ林檎みたいに真っ赤な顔でおどろいたようにこちらを見つめる先輩。


「さ、んの、すけ・・・?」


何が何だかわかってないんだろう先輩の顔

今は俺しか考えられないんだろう。

そのことにどうしようもない優越感を感じて。


「俺の前で、俺と二人きりの時に、俺以外の名前を呼ばないでくださいよ。」


そう耳元でつぶやけばゆらり目が大きく見開かれて。



そっと俺から立ちあがって距離をあける。

やってしまったとは思うけれど、後悔はない。


赤い顔のまま動かない先輩に背を向けて。

近づいてくる気配を待つ。


「見つけたぞ!三之助!」

もいるな!」


委員会の先輩二人。




ぼろぼろででもほっとした表情の滝夜叉丸。

にかりにかり全力で笑みを浮かべる小平太先輩。


どちらも俺が探していた人たち。


先ほどのことを何も知らないふりで二人に近寄って。


後ろで蹲ったままの先輩を意識しないようにした。






ようやっとまともに自覚したんだ。

不本意なことにあの先輩のせいではあるけれど。



俺はあの人が、



が好きなのだと。















※※※
このサイトの初ちゅーが三之助って・・・。
・・・あれ?はじめて、だよね・・・?
・・・とりあえず、この連載での初ちゅー。








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