ドリーム小説








宵闇 三之助6


















  あの時目覚めたとき、一番にあの子の名前を呼んだ



  その時から何となく気がついた痛んだ



  の想いの行く先が。


そんな風に顔を赤く染め上げて

そんな風に動揺して

そんな風に恐れて


それらは全部私が与えたかったものだというのに。


あの日から私は一度もを次屋に会わせないようにしている。

それは自身もまだ困惑して意味がわかっていないこともあるけれど、一番の理由は私がいやなのだ。

が自ら気づくのであれば私は何も言わないよ。

でも、強制的に思いを抱かせるのは許さない

刷り込みのように心を動かすのは許さない。


だからこそ、だからこそ

今はまだ会わせない

自身が想いに決着をつけたら、

そうしたら合わせてやらないこともない。


でも、私は意地悪だからね。


が次屋への想いに気がつかぬままでるのなら、私がを奪ってしまおう。



あの時、私が抱きしめた時、はほっとしたんだ。

安心の表情を浮かべたんだ。


その時に確信に変わった。


が思うのはあの子なのだと。

そうであってほしくはなかったけれど、私では何も意識されていないことがわかってしまって。


悔しいけれど

悲しいけれど










目の前、の気配を見つけて走ってきたのだろう。

迷子癖があるくせにすぐにのもとにやってくるのはいらりとする要因の一つだ。

私を見ていやそうな顔をする。


本当はあった瞬間穴に閉じ込めてやろうかと思っていたけれど、瞳があまりにもまっすぐすぎるものだから。


「次屋三之助」


名を呼んでまっすぐと睨みつける。


「なんですか。」

ふてぶてしいその態度。

いらりとするけれどとりあえず言わなくてはいけないことがある。



「っわあ!?」

どん、と鋤子ちゃんで地面をたたけば先ほどさんざん掘りまくった一つの穴があいて次屋を引きづり込んだ。

その穴のふちに座り込み落ちた黄緑を見下ろす。

何をするんだ、という非難が聞こえてくる前に口を開いた。


は私のだから。」

それにぴくりと眉間にしわを寄せる次屋。

その表情があまりに面白くてふ、と笑う。

「___なんてことは言わないけれど。」

がん、と衝撃を受けたような顔。

何とも言えないそれに先ほどよりも大きな笑いが漏れる。



を泣かすことは許さないよ。」


「そんなことわかってますよ。あなたに言われるまでもない。」


私の言葉に間髪いれず答え不敵に笑う次屋。

ムカつくけれどそう言うのならば信じてやろうではないか。


「俺は先輩のことが好きなんです。」

「好きな人を簡単に泣かせることはしませんよ。」


続いて言ったその言葉、私が負けているとは思わないが、の思う人は私ではないので仕方がない。

でも、

「無理矢理何かをすることも許さない。」

「・・・もちろんですよ」

「こっちを見て言って。その間は何?」


もう一つ付け加えた言葉に次屋はあさっての方向を見やがった。

しかも返答にしっかりとした間を開けて。


二人が近づくこと許したわけだけれど、次屋がに無理矢理したことは全く許す気はない。

今回のことがなければがどのように動いていたのかなんてわからないのだから。


「ちょ、何しやがんですか?!」

先ほど掘った穴の土を次屋の上に落としていけばさすがに焦った声。

「何って、…埋める?」

「いや、聞かないでくださいよ!」

ザックザック土をすくっては穴に落とす。

繰り返していればさすがに焦ったのかくないを取り出して登りだす。

まあ、今日はこのくらいで勘弁してあげようかと思い心やさしい私は鋤子ちゃんを穴の中にぽいと放り込みその場所を後にした。

「え、ちょ、このまま放置ですか!?」

次屋の声を無視しながら。














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