ドリーム小説










宵闇 弐ノ拾














それは一瞬



目の前に現れたのは黒い影。

それを避けるわけではなく、手になじんでいる棒で受け止める。


向こうはくない。

俺が持つのは一番得意な棒。


武器だけ見れば、負けるのは俺だろう。

相手はプロ。

俺はまだ卵。

それだけを見れば負けるのは俺だ。



だが、それがどうした?



実力不足?

そんなのとうにわかっている。

経験不足?

そんなの言い訳になどなるものか。






俺はただ自分の持てるすべての力を使って、この場所を守る。

ただそれだけだ。








学園で暴君と恐れられるあの人に、毎日毎日鍛えられている俺を、なめるな。





くないを思い切りはじきかえす。

きぃん

乾いた音を立てて飛んでいくそれ。

それに目を向けることなく、持っている獲物を相手の腹へと思い切り打ちこむ。

「っ、」

それをもろに食らった相手はくぐもった声をあげて、その場に倒れ込んだ。



「 壱 」

後ろから何かが近づく気配にふらり横に重心を動かしてそれを避ける。

そのまま後ろへと武器を突き出せばそのまま倒れる男。

「 弐 」

上から投げられた手裏剣を武器ではじき飛ばして、投げたものへ一瞬で迫る。

「 参 」

その言葉と共に木から男が落ちた。


「やるなあ、さすが三之助!俺も頑張るぞ!」

左門の声が後ろで聞こえたと思ったら男の悲鳴がそちらから聞こえてきて。


「左門、三之助、あまり動きすぎるなよ。お前らは、ここで敵を食い止めるんだからな。」


「 肆 」

するり目の前の男の首の後ろをたたきこんだ後に辺りの気配をうかがう。

まだまだ気配は減ることなく、こちらをうかがっている。

上等じゃねえか

いくらでも相手してやるさ。


後輩たちも、なかなかいい戦いをしている。

一番下である金吾と会計のところの二人は手を取り合いたがいで互いを庇い、ちゃんと敵を蹴散らしている。

それでも決定打にはならないそれを仕留めるのは体育委員の将来有望のしろだ。

実質のところ、あいつら、俺、作、左門の四人で戦っているようなものではあるが、いまはまだ構わない。

もう少しすれば、罠に回っていた作法がこちらに来る。



そこまででがひとまずの正念場、か。



新たに現れた黒にすぐさま向きなおり、邪念を捨てた。













図ったように現れた多くの気配。

それはこの場所から。


この場所を守りきることが、この学園を守ることになる。


いの一番に走りだしたのは三之助。

かろやかに、重さを感じさせない動作で三之助は敵を倒していく。

それに続くように左門も自らの獲物を手にとって。

三之助と左門は俺の学年でもダントツを争うくらいに強い。

俺は二人ほどじゃないけど、弱くは、ない。

ちらり後ろを見て一年と二年を見やる。

互いで互いを助け合いながら敵と戦っている。


1年生のことは時友に任せておれも、さあ参戦しようか。


用具委員の合間に食満先輩に教えてもらった武器を手に握りしめ、呼吸を整え目を閉じる。


右斜め前。


その気配は素早く俺の前に出る。



だが、よけられない速さでは ない。



迫る刃を肌に感じよける。

そのまま相手へと武器を振り落とし相手を地面にたたきつけた。





さあ、こい












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