ドリーム小説





宵闇 弐の玖















闇が落ちる


学園に闇が舞い降りる


それまでもう後僅か。








「守備はどうだ?」

先輩!」

硝煙倉の近く、罠を仕掛ける後輩を見つけて声をかけた。

えげつないものも数多くある。

それをかろうじて見分けられるのは、普段から彼らの罠を見ているからだろう。

「庄左エ門だ!」

「彦四郎も!」

「学級委員は状況把握、報告担当だよ。何かどこかに伝えることある?」

彦四郎、庄左エ門に走り寄るころころとした水色。

緊張は見られるが、恐怖はないようで。

「この場所はもう罠を仕掛け終えます。火薬委員図書委員は硝煙蔵の中です。綾部先輩と他の人たちはほかの場所の罠の設置にかかっています。」

「無理は、するなよ。」

責任感が強い作法委員の藤内の髪をくしゃりと撫でてやればくすぐったそうに目を細めた。

「大丈夫、ですよ。伊達に立花先輩の作法委員に所属してません。」

その瞳はどことなく悪戯っ気がある。

「確かに、な。頼りにしてるよ、藤内。」

「まかせて、ください」

「兵太夫、伝七」

「はい!」

「なんでしょうか」

どことなく不安そうな顔をする二人ににやりと笑ってやる。

「頼りにしてるからな、作法委員。」

それにぱあと笑顔が生まれる二人。

「何かあればすぐに連絡しろ。」

それに緊張しながらも頷いた藤内に笑って、硝煙蔵へと向かった。


「タカ丸さん。」

ちゃん。」

うす暗く肌寒いその場所でその金色はとても眩しく見えた。

「兵助君がいない今、この場所は僕が守るよ。」

へらり笑って告げる瞳は怖いくらいまっすぐで。

その姿はもう立派な忍びへと向かっていた。

一度眼を閉じ、ゆっくりと開く。


「頼みます。」



鋏を刃に持ち替えて











硝煙蔵から出て、先ほど藤内たちに言われたほうへと進んでいく。


「喜八郎、」

。」

たどり着いた場所では喜八郎がさらに蛸壷を増やしていた。

その穴穴に様々な毒虫を放っているのは生物委員。

木の上に罠を次々に仕掛けていっているのは、くのいちの子たちで。


「そこ、気をつけてね。」

指差された先の地面にははっきりと言って全く分からないほどの罠が仕掛けられていて。

「庄、彦も気をつけろよ。」

後ろの二人に言えばこくり頷いたのが見えた。

「どうしたの、。」

ようやっと穴から出てきた喜八郎が自らの汚れた顔を拭きながら聞いてきた。

「状況を聞こうと思って。」

「うん。みたとおりだよ。」

彼の言うとおり、この場所は大丈夫と思えるほど多くの罠があって。

喜八郎の頑張りが目に見えた。

「喜八郎、無理、しすぎるなよ。」

それにきょとりとした後彼は少しだけ笑った。

ふいに引き寄せられて喜八郎の腕がの背なかに周り一度ぎゅうと力が入れられた。

もだよ。」

耳元で聞こえたそれにそっと頷いた。

「喜八郎さん。少しよろしくて?」

その声と同時に離れて言った温もり。

少しだけ名残惜しく思いながらも喜八郎が結縁のもとへと向かうのを見送った。



















「三之助、作兵衛、左門。」

一番敵が来るであろうこの場所を任せるのはよりも一つ下の後輩。


彼らに、まだ人を殺めることを知らぬであろう彼らに、その積を追わせるのだ。


何度も何度もそんなことを思ってしまう、それは自身が弱いということなのだろう。

皆はもう覚悟を決めているというのに。

先輩。」

三之助の得意とする武器であろう。

彼は長棒をくるり振り回し地面に突き立てた。

左門は槍を、作兵衛は鉄双をそれぞれ手に持っている。

「俺らはもう守られるだけじゃないっす。俺らを信じてくださいよ。」

その言葉はまるで自身の心の闇を晴らすようで。




「・・・信じるよ、お前らを。・・・必ず、生き延びろ。」





























闇はゆっくりと濃くなっていく。



気配は少しずつ大きくなってくる。










忍びの卵

ましてや幼きものたちと侮るなかれ



瞳に浮かぶ意思は、まっすぐに

仲間を思う心は何よりも強く



信じる気持ちは何にも負けない












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