ドリーム小説








宵闇 弐ノ拾参














正門付近を通ると聞こえてくる激しい剣劇

庵に近づくにつれて濃くなる薬草の匂い

それらすべてに戦という文字を感じながら庵へと急いだ。

「数馬」

庵に入れば先ほどの硝煙蔵と同じように鋭い視線が向けられる。

神経が鋭くなっているからか気配にも敏感になっている。

だからこそ警戒はすぐさま溶けて。

先輩、その子、怪我したんですか?!」

の腕の中にいる一平を見てさあと顔色を変えた数馬。

「毒虫にやられた。処置はしてあるが一応見てほしい。」

そう言って床におろせば飛んでくる数馬。

「左近、水をこっちに。伏木蔵布を。一平、かまれたからどういう処置をした?」

かまれた個所を調べ的確な指示を飛ばす数馬は先ほどとは違い大変頼もしく見える。

それを見やった後一平のそばについている彦四郎をそのままに縁側に向かう。

襖で閉じられたその先に影が見えたからだ。

影といっても、それは恐れるものではなく、だからこそは近づいていったのだ。

「中に入ってくださいって言っても後でって言うんです〜」

「先輩も言ってください・・・」

喜三太と平太の言葉にひらり手を振って縁側へとでた。

そこには微かな月明かりの中で湯呑を手に持ち常のように寛ぐ学園の最高権力者。

「一年生が心配してます。中に入ってください学園長。」

「うむ。」

ゆらりとも揺らがないその背に言葉を投げかけるが返事はあいまいで。

「・・・学園長。」

帰ってこない返事に、いつもと変わらぬ夜を過ごす姿に、ああやっぱりそう言うことかと理解した。

「これもまた、あなたのせいですね。学園長先生」

頭をよぎるのは懐かしき空気をまとって現れた彼女のこと。

「わざと先輩たちがこの場所にいない時を作って」

一度さらわれた彼女。

「そしてそれをまた外部に漏らしたのですね。」

原因は、この人だった。

「これが俺たちを思って行ったことであろうと」

たとえこれからを生き抜くために必要なことであろうと

「俺たちの実力を信じてやったことであろうと」

たとえ心を決めさせるために行うことであろうと

「もしも大切な後輩たちが一人でもかければ___」

大事な子たちが傷つけられるのだというのならば

「俺はあなたを許せませんから。」

俺はあなたを許さないから。


それだけいって中へと向かう。

その間にも返事はなく。

(本当に食えない人だ・・・)





先輩!」

彦四郎がの姿を見つけて駆けてくる。

その向こうには顔色が良くなった一平もいて。

「数馬」

「もう大丈夫です。孫兵の処置がよかったんでしょう。まだ激しく体を動かすことは禁止ですけど。」

そう言ってふにゃり気が抜けたように数馬は笑った。

そっと辺りを見回せばくのいちの子たちは秀作を見ていてあわただしく動き回っている。
他の一年は運んできた水を移し替えていて。
左近は数馬の横でまっすぐとこちらを見てきていた。

「左近、数馬、これから先さらに怪我人は増えるからな。頼んだぞ。」

それにこくり頷くのをみて今度は乱太郎へと目を向けた。

「乱太郎。」

「へ?はい?」

きょとり首を傾げる様はあまり緊張を感じない。

「何かあったら乱太郎が伝えに来てくれ。」

「わ、私がですか?」

驚いたように眼鏡の奥めがぱちくりと瞬く。

「今は情報を早く伝えるすべが必要なんだ。お前の足を信頼してる。」

そう言えば乱太郎はきりりとした顔に代わってしっかりと頷いた。



「俺らは正門前に移る。あとは任せた」

「「「はい!」」」


帰ってきた返事に頷いて、彦四郎を連れて庵から駆けだした。



















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