ドリーム小説
宵闇 弐ノ拾肆
そこは相変わらず鋭い金属音とめまぐるしく気配が移り変わる場所。
黄緑色の三年と喜八郎を中心にかかってくる敵たちをどんどんと叩きのめしていっている。
そんななかで水色と青色も必死に応戦している様が見えた。
疲れは見られるが、その瞳から戦う意思は消えていない。
それに少しの安堵を感じた。
少し距離のある木の上に感じるのは虎若の気配。
そのそばには兵太夫の気配も感じて。
先ほどから聞こえる微かな銃声音はこの二人であろう。
おそらく木の上に上がろうとすれば兵太夫の罠が発動するのだろうから、そこにはまだ大丈夫だと他を見る。
ぐるり見渡せば端の方で蹲る二人の水色とそれを守るように立っている他の水色と四郎兵衛。
一度ふらりとよろけた伝七のもとに迫る黒い影に四郎兵衛が慌てて応戦する。
だがそのせいで均衡が崩れたのか、他の影が後ろで蹲る二人に迫って。
きん
その影との間に入り込み刃で応戦する。
そのまま相手の腹に蹴りを入れ遠くへと飛ばす。
「先輩!」
の姿に歓喜の声を上げる小さな水色たち。
そこにいたのは団蔵、金吾、伝七、左吉、
その中で伝七と左吉は蹲っていて、微かに鉄の匂いが鼻をかすめる。
「伝七、左吉、何処を怪我した。」
向かってくる敵をいなしながら二人に尋ねる。
が来たことによって金吾と団蔵は後ろの二人のそばに行って傷を見ている。
「伝七は腕です。結構深い・・・」
「左吉は足を。」
それを聞いては少し遠くに待機させていた彦四郎を呼ぶ。
それに慌てて近づいてきた彦四郎に後ろの二人と一緒に伝七左吉を庵に運ぶように指示を出した。
「代わりに用具の三人をここに。」
「わかりました。」
三人で二人を運ぶのはきついかとは思ったが避ける人員はそんなに多くないわけで。
「四郎兵衛、三人を庵まで頼む。」
「わかり、ました。」
四郎兵衛も動き出したのを見て新たな敵に目をやる。
本当にどれだけいるのだこいつらは。
そう思いながら向かい来る刃をはじき飛ばした。
「作兵衛、後ろだ。」
「え、わ、すみません先輩。」
「しっかりな。」
向かってくる敵を退けながら目に入った作兵衛に指示を飛ばす。
三之助、左門、藤内は今のところまだ大丈夫そうだ。
怪我もところどころ見られるが、大きなものではないようで。
もう少ししたら一人ずつ休ませるか、というようなことを考えながら紫へと近づく。
「喜八郎。」
「」
見えた姿に声をかければ喜八郎はこちらを見ずに返事を返す。
「どんな感じだ?」
とりあえず状況把握が必要だと思い声をかける。
「全く減らないねえ。でも、実力はあまりない。私たちどころか下級生だけでも倒せてるくらいだもの。」
「人数で押してきただけで精鋭ではない、ということか。」
「うんそうだね。でも、門の向こう指示を出しているのがいるね。」
「一人か?」
「今のところは。」
「そうか・・・」
簡単にまとめられた報告。
内容に少しだけほっとする。
もしも実力重視でこられていればこの場所はもう持っていなかったろうから。
門の向こうに気配を殺せば確かに感じる動かぬ気配。
おそらくそれが指示を出しているのだろう。
検討をつけて次の敵に手をかける。
周りをみてみれば辺りはすごい倒れた人が転がっていて。
そのまま目の前の敵をなぎ倒しながら、後輩たちに目を向ける。
誰もかれも体のどこかから赤を滲ませている。
三年生ですらも肩で息をしていて。
それでも刃をふるい続けていた。
「このままじゃ持たないな。」
「うん。持たない。」
喜八郎へとこぼした言葉に間髪入れずに帰ってくる返事。
それに頷きを返し頭を巡らせる。
闇はまだ深く明けは遠く。
ならばどこをどうするか。
「生物と図書を正面に回す。・・・疲れてきて動きの鈍いやつはしばらく引っ込めよう。」
「そうだね。」
喜八郎も同じことを考えていたのかすぐさま同意を返してくれて、ならばそのようにしようと動き出す。
「すまん喜八郎、この場所をもう少し任せる。」
「任せて。」
それにもう一度頷きを返してからは一番前で走り回る黄緑へと近づく。
「三之助」
「・・・」
近づいたに獣のような瞳で振り返った三之助。
その瞳にが映った瞬間わずかに光が戻る。
「・・・先輩」
かすれた声に背筋が冷えた。
まだ早すぎる行為に闇に落ち切らせていはいけないとその瞳を見つめる。
「もう少し、頼むぞ。」
自らに近づく刃を落として三之助に言葉を投げる。
それにゆっくりと瞬きをした三之助の眼には色が宿っていて。
「任せてください」
それを聞いては走り出した。
この日何度繰り返したかわからないその言葉が皆の心をつなぎとめていた。
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