ドリーム小説
宵闇 弐ノ拾漆
止まぬ剣劇
激しい喧騒
闇色の中その場所は激しく息をしていた。
今正門は三年生を中心に何とか敵の進行を食い止めている状態だ。
硝煙蔵にいた図書を正面に連れてきて疲れが大きかった一年と怪我をしていた幾人かを下げる。
その硝煙蔵は今庄左衛門と火薬委員に任せてある。
裏に回っていたであろう敵はもう正面に回ったようでもうほとんど姿は見えなくなっていた。
そのため生物も正門に回したのだ。
裏は結縁を中心としたくのいちに。
庵には数馬を中心とした保健委員とくのいちがどんどん増える怪我人を治療している。
は正門で一向に減る気配を見せない敵を相手に立ちまわっていた。
「本当に、どんだけいやがんだよ・・・」
「全くです。」
思わず口から洩れたそれにたまたま後ろにいた孫兵が返事を返す。
彼の首に巻かれた赤が彼の後ろに回っていた敵を挑発する。
それに孫兵がすぐさま振り向き相手を沈める。
その一連の動作に迷いはなく、その年相応ではない姿に驚愕すら感じる。
でも、その瞳は常と変わりなく、激情を含むでもなく淡々としていて。
そこまで考えてこんなことを考えている場合ではないと意識を引き締める。
考えを巡らす間にも体は自然に動きを続けていて。
そんな自分に笑いが漏れる。
ぞ く り
瞬時走った背筋が凍るような気配にその場の動きが一瞬にして止まる。
それは敵も後輩たちも同じようで。
彼らは刃を合わせたまま震えだした。
それは門の向こうから。
門の前に感じていた他よりも大きく感じていた気配のもとに現れたもっともっと大きな気配。
いや、それは気配ではなかった。
それは気配など持っていなかったのだ。
ただぽっかりと空間があいたような違和感。
それは闇よりも深い闇をまとっていて。
それに名前をつけるとすれば「恐怖」だろう。
それは門をとび越えることなくどこかに消えて。
駄目だと思った
あんなのを学園内に入れてはだめだと。
恐怖というにふさわしいそれは、現れた時と同じように一瞬で消えた
その方向は硝煙蔵の方で
体中が冷水につかったように冷たくなった。
とその瞬間動きが止まっていた敵が今までにない動きを見せだして、それは素早く後輩たちに迫っていく。
標的にされた水色は咄嗟のそれに動くことができず。
が動くにしても遠すぎて。
「きり丸!」
名を呼んだ瞬間、彼の眼がふらり恐怖に揺れた。
きん
鋭い音を立ててそれを防いだのは紫。
それに息をつく間もなく他の敵も動き出して。
でもそれにが近づくよりも先に喜八郎の言葉が辺りに響く。
「、行って!!」
それに駆け寄ろうとした体を押しとどめて喜八郎を見る。
本当はこの場所に残り、この場所を守りたい。
でも、それよりも先に今はあれが向かった先を知らなければいけない。
その思いからは硝煙蔵へと足を向けた。
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