ドリーム小説






宵闇 弐ノ拾玖

















喜八郎に促されたどり着いたそこ。

地面に横たわった赤黒い金色に、体中の血が沸騰するような感覚に陥った。

そしてそのそばに跪く青に水色に向かっていく銀色が見えた時、体中の熱が一気になくなった。

キイン

乾いた音を立てたそれに間に合ったことを感じ鋭く三郎次に指令を出す。

そうすれば呆けていた三郎次がようやっと動き出して、水色の後輩に指示を出したのを見届けて、

そして 

ぽかりと開いた空間へと鋭い眼を向けた。

不自然なほどの気配のなさ。

例えるなら、無。


それが、そこにはあった。





タカ丸を運ぼうとしている後輩から意識をそらして、その無の空間に全ての意識を集中させる。

感じるのは恐怖ではなく、心の底から燃えたぎるような怒り。

そして



「おやあ?僕の刃見破ったんだ。珍しいねえ。」




大事な人に害をなした相手に刃を向けられることへの悦びだった。
   (それはまるで、こころのおくそこほんのうのようにすくっていたかんじょう)





紅い髪の男は楽しそうに唇を舐めた。

それにぞわり背筋が逆なでされるような感覚を感じた。

「庄、伊助、三郎次、さっさといけ」

恐怖からだろう固まる3人に声をかければびくり震えたのが感じられた。

「ここは俺が止める。はやくタカ丸さんを。」

にやあり

嫌な笑みを浮かべた赤い男はその口のままで言い放つ。

「いいよお。行きなよ。どうせみいんな死んじゃうから、さ。少しくらい遅らせてあげる。」

その言葉に怒りという感情が沸点に達した。

「その減らず口を閉じろ。」

気づけば体は動きだしていてその男へと刃を放っていた。

男は舞うようにそれをよけさらに笑む。

後ろでようやっと3人が動き出したのを感じながら全ての神経を目の前の男に集中させた。

先ほど沸点に達したおかげか頭がクリアになる。


「さ、ね、楽しもうか」

楽しそうに愉しそうに笑う男。

体中が、逃げろという指示を飛ばす。

体中が、恐怖というものに支配されそうになる。


だが、それでも、自らの後ろには守るべき子たちがいて


自らがいなくなれば、この場所は、もうだめで、


生まれたたくさんの感情を必死で押し込めて、同じように笑った。


「お手柔らかに、お願いしますよ。」


そうして紅い男は本当に楽しそうに恍惚とした笑みを浮かべて見せた。












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