ドリーム小説
宵闇 弐ノ弐拾壱
「タカ丸さん!しっかりしてください!!」
庵に運び込まれたその体。
それに三反田先輩が絶句するのがわかった。
だがさすが保健委員といえよう。
一瞬でその状態から復活し、未だ驚きにおののいているみんなにに言葉を放つ。
「乱太郎、伏木蔵!持てるだけの水を!くのいちのこたちはありったけの布持ってきて!左近、止血手伝って!」
その声に慌てて動き出す左近たち。
「っ、三反田先輩、俺に何かできますか!?」
それを見ているだけなんてできなくて。
慌てて出した声。
それにちらりとこちらを見た三反田先輩
(その目はいつもとは違って鋭く、雰囲気は恐ろしかった。)
「後輩にこんなこと頼むのはどうかと思うけど、庵の外で見張りとして立っていて。」
それに体が降るりと震えた。
こわいこわい
さっきまであんなに明るく笑っていたタカ丸さんが一瞬でああなった。
それはとても、怖いこと
一瞬恐怖に支配されたのがわかったのか三反田先輩が短く言った。
「できないというの?」
静かに言い放たれたそれはでも鋭く俺の心をえぐって。
「庄左エ門、用具の子たちと彦四郎、時友は正門に戻った。もうすぐしたらまた怪我人が運ばれてくると思う。外に立って彼らを待っていて。」
「はい。」
「乱太郎も、あとは伏木蔵とくのいちの子たちに任せて庄左エ門と一緒に。」
「は、はい!」
「っ、俺も、」
「池田。」
俺にもできます。
そう言おうと思ったのにそれは遮られて。
「正門に行って。」
先ほどとは違う役目。
それはお前では見張りにも何にもならないと暗に告げているのか、それとも・・・
「タカ丸さんと先輩のことを告げてきて。」
反論は許さない。
前面に押し出されたその雰囲気に思わず体が固まった。
「行って。」
その言葉に押し出されるように体が動いていた。
先ほど感じた重い気配。
いきなり士気の高くなった敵兵。
それに中に入らせてはいけないという思いに駆られてを、行かせた。
今ではそれを後悔しているけれども。
さっきからいやな予感が止まらない。
それでも目の前の敵から目をそらすことなどできなくて。
今何とか持っているこの均衡。
これを崩すことは、私たちの負けを意味する。
先ほど戻ってきた彦四郎たちに再び怪我人を運ばせた。
それによって再び減った人数。
相手も減ってはいるがそれでも、まだいなくなることはなくて。
「っ、綾部先輩!」
意識を闇にのませて敵を倒していってたら、不意に聞こえた後輩の声。
それはいつもはあまり聞かない後輩のものであったからなおさら意識が浮上する。
しかも確か記憶違いでなければ彼は火薬委員だったはずだ。
・・・なぜここにいる?
「・・・なに、池田。」
確かそんな名前だったと思って呼べばすぐ後ろに感じたぬくもり。
「タカ丸さんが___」
言い淀む様にすぐさま言いたいことを理解する。
「敵は学園内に?」
「っ、はい・・・いまは」
そのあとに続けられた言葉に体中の血が沸騰するような暑さを訴えた。
「今は先輩が一人で応戦されてます。」
紅はさらり、と手に持っていた坪からその粉を道に垂らした。
それは途切れることなくある場所に続いていて、その長さは自分に害が及ぶことのないように設定されていて。
本当ならばこの学園中にわたるものが良かったが、それだけの量は備蓄されていなくて。
でもまあ、先ほどのあの子くらいはまきこめるだろうと仮定しそれを続ける。
女の身でありながら対等とは言えなくても自分に挑んできた気迫は面白いものがある。
時間があれば自分の手で育ててやりたいと思わせる何かがあって。
それでもまあ面倒でもあるので、時間があったところで本当にそうするかどうかということは未定ではあるが。
ただ、あの痛みに苦しむ顔は何物にも代えがたいほど美しく、妖艶だった。
幼い身でありながら、相手が何をすれば喜ぶのかが分かっているかのようにほとんど痛みに声を上げることはなかった。
まあ、さすがに最後は甲高い声で悲鳴を上げていたが、・・・それさえもなかなかにそそられる。
自分の手でぐしゃぐしゃにして指の一本一本をはいで、そうして死ぬ一歩手前の痛みを恐怖を、与えてやりたい。
そう思うほどには気に入った。
今自分に課せられている使命は学園中のものを殺しつくすこと。
そして一番は学園長の命を奪うこと。
だが、最後まであのものが生きていれば、連れて帰ってもいいかもしれない。
目の前に掲げた火種をうっそりと眺めにたり笑みを浮かべた。
※※※
三郎次は好きですよ!
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