ドリーム小説







宵闇 弐ノ弐拾参

















痛み痛み痛み



もしかしたら一瞬だけでも気を失っていたのかもしれない。

鼻につく火薬のにおいに意識が一気に覚醒する。

それと同時に痛覚も一気に生まれたがそれを歯を食いしばることでやり過ごす。


ゆっくりと辺りを見渡せばそこは先ほど紅と戦った場所で。

そうして鼻につく火薬のにおいは、地面に流される火薬の粉のもので。


一気に頭が回転した。



爆発させられる。



それを思った瞬間にの体は動き出した。

痛みなど意識から追いやって、そうしてまずはくのいちのもとへと。

いつ爆発するかわからない状態。

あの火薬の道を消すよりも確かな方法。


「結縁さん!早く、ここから離れてください!」

彼女らがいる場所に着くなりそう叫ぶ。

それにふわり姿を現した桃色。

彼女たちは一瞬怪訝そうに目を眇めたが、の焦りようを見て何事かを悟ったのだろう。

皆で皆頷きあって、その場所から姿を消した。




それを見やってから自分も移動する。

正門の方へと


否、いま一番狙われているのであろう場所へと。


硝煙蔵の近くを通るのは危険ではあったがそれが一番近道でもあったからその場所を駆け抜けた。

走るたび滴る赤がうっとおしくて頭巾を手に巻く。

走って走って、そうして




どおん




後ろから聞こえた爆音に、続いてくる爆風に、体を踏ん張ることで耐えた。

「っ、」

爆風によって飛んでくる石などのかけらが体に当たる。

痛みを伴うそれだが必死で遠ざけて。


そうして走る。

向かう。

あの場所へと







、先輩!」


聞こえてきた後輩の声。

ぼろぼろのその姿。

それを目にした瞬間。は叫んだ。

「三之助!庵に向かえ!!」
























傷だらけの先輩や同級生たちが運び込まれる庵。

その中はとても混雑していて。

数馬先輩と左近先輩は必死でタカ丸さんの治療をしている。

他の皆は私を含めて皆そのほかに運び込まれてきたけが人の手当てを。

今、一番怪我が深いのはタカ丸さん。そして小松田さん。

小松田さんは一応落ち着いているから今はくのいちの先輩が見ている。


そんな中。

庵の縁側。


どうして学園長先生は動かないのか、という考えが浮かぶ。

最初からこの場所にいるのに手を貸すわけでもなく、私たちを見るわけでもなく、ただそこにいるだけで。

なぜ、この状況で動かないのか。

それは私には測りきれないことで。

それに意識をやるよりも、目の前のことで精一杯で。

だからこそ、その考えを心の奥底に追いやった。





ぞくん




それは何かよくわからないもの。


わかることは二つだけ。

あれは良くないもので、あれに私たちは敵わない



それはゆっくりと姿を現して。

色は黒いのに紅い。

学園長の前に現れたそれに、一番に気づいた数馬先輩が急いで自分の体を学園長と男との間に滑り込ませる。

私たちはその気配に体中が震えて、動くことなどできなかったというのに。

「学園長、さがって、くださいっ」

不自然に息切れする数馬先輩。

私たちの倍以上もの殺気を体中で受けているみたいで。



ゆっくりと男がくないを振り上げたのだけがわかった。



「っ、先輩っ!!!」

金切り声に近いそれをあげたのは、私なのかどうか、それすら分からなかった。


「数馬!」


ただその声だけが希望に思えた
























※※※
乱太郎視点









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