ドリーム小説








宵闇 弐ノ弐拾伍






















「ここは私に任せて先に行け!滝夜叉丸!」





先輩方に伝えるために走り出した私たちの後ろには、いくつかの影。

それはきっと知られることをよしとしないものたちがはなったのであろう。

いつもであれば計画を練って、撃破する敵。

だが今そんな時間はなく、さらに言えばお使いだけだったから、大した武器も持っていない。

私の横では同じように走る三木エ門。

さっきは焦るだけだったが、いまではしっかりと前を見据えて走っている。


「   」


ぼそり三木エ門が何かをつぶやいた。

それにちらり目線をやればまっすぐな瞳と目が合う。

「滝夜叉丸、ここは私が食い止める。先輩方に早く知らせてくれ。」

その瞳に宿る決意は固く、彼の手にはいつもの相棒ではなく刃。

彼は火薬に関することだけではなく、刃物に関しても私に弾けはとらないから。

「・・・わかった。」

その返事ににやりいつもの不敵な笑みを浮かべた三木エ門はそのまま言った。

「癪だがお前の方が足が速いからな。」

いつもであればあり得ない言葉に、驚く。

だが、立ち止まるわけにはいかないから。

「任せておけ。」

ただそれだけを返して





そうして私は三木エ門をあの場所に置いてきたのだ。





本当ならば、私も残りたかった。

だが今どれが最善の方法かと言われればそれしか考えつかなかったのだ。

実は私よりもの三木エ門の方が接近戦や複数戦は得意だ。

だから、これは、いまの最善なんだ



必死に自分に言い聞かせて、ただただ走った。





死ぬなよ、三木エ門




おこりえないという可能性もない、この世界だからこそ、心の底で願った。





















先輩たちの実習先の明確な場所ははっきり言ってわかっていない。

出発前七松先輩たちに聞いたところで、曖昧にはぐらかされたから方向だけしかわからなかった。


その曖昧な場所へ向かって足を進める。

月明かりがほとんどない今夜

忍びとしてはとても動きやすい日。

今の滝夜叉丸にとっては、良くも悪くもあることだった。



森の中をすり抜けて走る走る。


未だ感じることのない先輩方の気配を求めながら。





(っ、こんな時に!)


不意に感じた、何かの気配。

それを感じ取って思わず立ち止まる。

懐の愛用の輪子を取り出し深く、構える。

(はやくはやく、先輩のところに行きたいのに。)

きん

飛んできた手裏剣を輪子ではじいて、その方向に視線を向けた瞬間、首元に冷たいものがあった。

ひんやりと背中を流れる汗に、頭が急速に回転をする。

回避せよ回避せよ

どの方法をとる

どうやって逃げる

一瞬で見つかった答えを実行に移そうとすれば刃がすっと外される。

それを不思議に思う間もなくそれから距離をとればそこには黒色


「あれ?滝ちゃん?」


良く知った声。

いつもとは違う闇色を身にまとっていたその人。

今一番必要だと感じる人がそこにいた。





「なな、まつせんぱっ!」




「滝、なんでここにいるの?」


いつもとは違う声色に

色のない瞳に

微かにする鉄のような臭いに



でもそんなもの怖くもなんとも思わなくて

今はただそれよりもそれよりも


いわなきゃいわなきゃいわなきゃ、



「先輩、がくえんが、おねがい、たすけてっ」


先輩のその体に抱きついて子供みたいに縋りついてただただ助けを求めた



「   たすけて せんぱい   」



私たちではあの中を突破できないのです

私の力ではあの場所を守れないのです

おねがいはやくはやくはやく





あの場所を助けてください

















滝視点







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