ドリーム小説
宵闇 弐ノ参拾
もうやなんだ
目の前で大好きな人たちが消えちゃうのは
守られてばかりなのは
強くなりたい
強くなりたい
強く ならなきゃ
そうは思うのに、体は思うように動いてくれなくて
久作先輩には逆に庇われて
それどころか俺たちがいるから時友先輩も動くことができなくて、
張り上げた声は辺りに響いて、敵の布に隠れて見えない顔がにやり笑ったのが見えた
振り下ろされる刀に
よけようとしない先輩に
体中が悲鳴をあげそうになった。
もう嫌なんだ、俺のせいで、誰かが死ぬのを見るのは
一閃
それは金属音を立てて、辺りに響いた
現れた、先輩たちに心の底からの安堵が漏れた
「きり丸」
いつも大きくはないその声は今日ばかりはどこか切羽詰まったようで。
「長次先輩・・・」
名前を呼べば、ふわり、始めてみる顔。
ぎゅう、と俺と怪士丸と、久作先輩といっぺんに抱きしめられた。
「良く頑張った」
耳元のその声に、我慢していた何かが
切れた。
「っ、〜」
溢れる嗚咽を我慢するように、長次先輩の微かに鉄の匂いが残る服に顔をうずめる。
ぽんぽんと優しく撫でられて、それがあったかくて嬉しくて。
「きり丸」
久作先輩が俺をそっと自分の方に引き寄せて抱きしめてくれた。
「すまない久作。あとはまかせる。」
離れていく先輩に縋りつきたかったけど、久作先輩が代わりに抱きしめてくれたから。
「大丈夫だよ、きり丸。」
先輩よりもずっと小さな手が頭をなでてくれて。
怪士丸の小さな声が俺を落ち着けさせてくれた。
「先輩方が、守ってくださる。」
久作のその言葉に、心の奥から、俺が叫んだ
守れるくらい強くなろう
先輩に守られるだけでなくて
俺が皆を守れるくらいに強くなろう
だから、もう泣くのは最後だから
いまだけもう少し
見つけた
小さく震える水色
肩を抑える青色
まっすぐと敵の目を睨みつける水色
どれも今日ずっと身を案じていた後輩たちのもの。
傷つきながらも瞳は強く、相手に決して屈しようとしないその姿。
怪士丸は震えながらも久作を支えていて
久作は小さな体で身を呈して後輩を守って
きり丸は泣きそうに顔をゆがめながらも動けない二人を守るように
それはどれも
忍び
としては不正解。
でも、それでも
その心を想いをなくしてほしくはない
三人の前、守るように立つ体育委員の後輩は、小平太を連想させて。
小平太と滝夜叉丸がその子を守るために動いたから、私はあの子たちを守ろう。
「きり丸」
名を呼べば、ふるり驚きに見開かれた目。
わなわなと震える体は今にも泣きだしそうで。
久作も、怪士丸も、その瞳に大きな安堵と希望を浮かべて。
縋りつく小さな体を優しく撫でて、声をかけて
辺りを見ればこの学園上級生たちの逆襲ともいえるそれが始まっていて。
私も参加しないはずなどない。
この大切な子たちを場所を傷つけたやつらに手加減などしてやるものか。
全てが終わったらもう一度皆を抱きしめてやろう。
久作に預けた温もりを思いながら武器を握った。
※※※
きり丸と長次
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