ドリーム小説
宵闇 弐ノ参拾壱
もう、駄目かもしれない
そんな思いが生まれた
日は昇る気配を見せないし、夜が永遠に続くような錯覚に陥る。
体力ははっきり言ってもう限界だ。
くないを持つ手も、もう握力がない。
いつもは実習でもどちらかといえば攻める側だった。
守るのはこんなにも、苦しいものなのか
きりがない敵
減っていく体力
増えていく負傷者
俺よりもずっとずっと後輩たちの方が苦しいはずだから
まだ駄目じゃない
あきらめちゃ、駄目だ
「富松、藤内、左門、伊賀崎」
騒がしいのに凛と響いて聞こえてきたのは綾部先輩の声。
「まだ、頑張れるよね」
質問ではなくそれは肯定
それは信頼の証
「もちろんです!」
「行けます!」
「大丈夫です!」
「任せてください!」
皆が皆違う言葉で同じ意思を伝えれば先輩が微かに笑った
振り向けはしないけれど、気配でわかったんだ。
「良く言った!」
その声が響くと同時に目の前の敵が倒れていった。
ふわり目の前に降りてくるのは委員会の先輩で
「作兵衛!」
同時に降ってくるのは自分の名。
くしゃり頭をなでられたのをあっけにとられてみる。
「留先輩・・・?」
にかり
目つきの悪い目元が柔らかく下がる
「待たせて悪かったな。」
周りの気配を見ればあちらこちらで良く知った気配が増えていっていて。
「もう少し一緒に、頑張るぞ!」
下がっていろ、とか
あとは任せろ、とかじゃなくて、
一緒に戦おう
その言葉は半人前の自分を認めてくれているように感じて。
「はい!」
先ほどまで震えていた手はしっかりとくないを握った。
いつの間にかこんなにも大きくなっていたのに
どうして自分は気づかなかったのだろう。
たどり着いた学園内の一番前衛
幾人もの黒と応戦する紫と黄緑
倒れそうにふらりよろければ他の誰かが庇って、そうして体勢を立て直す。
ぼろぼろな姿に
必死な様子に
あきらめない表情に
こいつらの成長を感じた。
委員会で買い出しに行ったり、裏裏山で鍛錬につきあったり、そんな時何かあれば彼を後ろにかばっていた。
だが、それはきっと俺の自己満足だったのだろう。
だってあいつは今あんなにも強い
「まだ、頑張れるよね」
「もちろんです!」
「行けます!」
「大丈夫です!」
「任せてください!」
綾部の言葉に皆が口々に答える。
それに、悦びが湧き上がる。
ふわり綾部が微笑む感覚に、俺も笑った。
「良く言った!」
声をあげて伊作と共に降り立てば驚きに見開かれる瞳。
安堵の気配。
くしゃり作の頭を撫でれば名前を呼ばれて。
「待たせて悪かったな。」
それにふるり頭が横に振られる。
「もう少し一緒に、頑張るぞ!」
いつもとは違う
下がってろ、とは言わない。
共に闘うのだ。
この場所を守るために
「はい!」
殺すなんて生ぬるい
もっともっと死ぬ方がましだという目にあわせてやるよ
俺の大事な子たちに手を出したんだからな。
※※※
作と留
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