ドリーム小説






宵闇 弐ノ参拾伍
























「っ、」


乱太郎の声に走って走って、たどり着いたそこではが紅の髪をもつ忍びと戦っていて。

そのがいつもとは違って。

動きがいつも以上に素早い

目に光がない

ただただ黒く

どす黒く


赤が散るのに、なんの躊躇もなく体を動かす。


そして、

戦うのに笑みを浮かべていて。


庵にいた水色が恐れるようにを見ていた。


学園の長は微動だにせず、目の前で生徒が傷つくのを見ていた。



ああ、やっぱりこの人か。



そう思ったのはもう呆れだとかそんなのじゃなくて

仕方がないという感情。

そんなことよりも今はずっとずっと大事なことがあるから。






「っ、」

共にここに走ってきた綾部が息をのむのがわかった。


でも、それは一度だけ。


彼は何のためらいもなく、に近づく。

走り寄って、ゆく。


三郎が顔をしかめるのが見えた。

でもそれは一瞬だけ。

すぐさま俺に目をやって、共に頷く。







「「「っ!」」」


キイン


名を呼ぶと同時に三郎がが振り下ろした刃を受け止めて、紅の男がはなった手裏剣を俺がはじき飛ばす。








「お相手願いましょう。紅の御方。」





あのこたちに多くの傷をつけて。

この子にこんなことをさせた



それは、許しがたきことである。































「「っ!」」



触れた体温はずっとずっと触りたいと思っていた人のもの。



乱太郎の声に気づけば走り出していた。



先輩方が帰ってきてくださって、どうしようもないほどの安堵が漏れた。

でも、それ以上に「あれ」と一人で対峙しているが気になって気になって。




お願いだから、無事でいて




そう思いながら鉢屋先輩と尾浜先輩の後を必死で追う。

ひきつる体も、痛みを訴える足も、いまはもうどうでもいい。


早く早く


大事なあの子のところへ










たどり着いた場所でとてもとても楽しそうに嗤うを見た瞬間


駄目だと思った。












温もりはいつも以上に熱く、その時点で体が多大な熱を発していることが分かった。

紫色のはずの装束はどす黒く、赤が黒へと変化して。

ぱりりと固まった赤が地面に落ちる。

でも大部分はまだ紅く紅く。


ぎゅう、とその温もりに抱きついて何度も何度も名前を呼ぶ。

鉢屋先輩たちは紅の髪の男と対峙してくれていて。

その間にをこの場所から遠ざけなければと。






何度も何度も、愛しい名前を、呼ぶ



からり



地面にくないが落ちる音。

「きはち、ろ・・・?さぶろ、せんぱい・・・?かんちゃ、せんぱい・・・?」

呼ばれた自分の名前に心の底から安堵した。


「うん、そうだよ、私だよ、。」


ぎゅうと今一度強く抱きしめればがくり、の体から力が抜ける。

何事かと思い顔をのぞきこめば、息が荒くて、体中のいたるところを抑えていて。

「っ、善法寺先輩!」

を抱き上げて、庵の中に飛び上がって、先輩を呼ぶ。

「なに。」

それに鋭い目つきで返答した先輩は私の腕の中のをみて大きく目を見開いた。


「っ、!」

「せん、ぱい。」

駆け寄ってきた善法寺先輩がの体に触れ質問をする。

それに小さな声でが口を開いて。

「どうした、どこが痛い?」

微かに険しくなった先輩の表情。

「俺は、平気です、から、」

それなのに、は、

「っ、小松田さん、をタカ丸、さんを、」

泣きそうな顔で、でない声を張り上げて、

?」

善法寺先輩の胸倉につかみかかって。


叫んだ


「三之助、をっ!お願い、ですから、死なせないで!!」



「お願い、あの子たちを、生かして!!」



悲痛な声は辺りに響く










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