ドリーム小説







宵闇 弐ノ肆拾



















赤い赤い


黒い黒い


赤と黒で視界が染まる。


手が赤く紅く染まる


俺は闇に引きずり込まれていく



こわい



思っても声になどならず。




引きずられていく黒に


だれか


だれか









「「「っ!」」」












柔らかい光に涙が出そうになった。









ふわり




意識が浮上する。

目を開けたそこには見慣れた天井。

鼻につくのは薬草の匂い。


くるくる

くるくる

頭の中で必死に今の状況を理解する。

でも、なんだかその動きは鈍くて。



「目、覚めたんだね?」

「?っ!」

その声に顔を動かそうとすれば体中がぴきりと音を立てた。

体に走る痛みに、声をかけてきた伊作は苦笑しながらを止めた。

「まだ動かないで。傷がいたるところにあるからね。」

ふわり笑うくせに何処となく悲しそうなその雰囲気は、どうしてだろうか。

先ほどよりもゆっくりと思考をまわして考える。

どうして、ここにいるんだっけ


その答えを見つけた時、何よりも先に後輩の顔が浮かんだ。


「っ、三之助はっ!?」


ようやっと回り始めた頭で慌てて問いかければふわり口元に人差し指。

そのしぐさに一瞬体の痛みも忘れて。

静かに、と言われて口を紡ぐ。

「さっき薬がきいてまた寝たところなんだ。もう少し寝させてあげて?」

それはつまり無事だったということで。



ほろり


無意識に流れた涙は紫色によってぬぐわれた。

「おはよう、

いつの間にか現れた柔らかな温もりに包まれて。

顔は見えないから彼がどんな顔をしているのかは分からない。

でも、名前を呼ばれた。

震える声

それは優しく胸に落ちていく。

ふわりふわり

それがどんなに幸せなことなのか実感して


「おは、よ。喜八郎」


ぎゅうと力が入った腕はとてもとてもいたかったけど、生きているのだと感じられた。


「まったく、はいつも心配ばかりかけるんだから…」


以前も同じようなことがあったなあ、と頭のどこかでぼんやりと考えていればそんな言葉。



ああ、また心配かけてしまったんだね。


「ごめんね、喜八郎。」

その言葉に答えるようにさらにきつく抱きしめられた。









/ next
戻る