ドリーム小説
宵闇 弐の伍
知らせは突然だった。
お天道様がてっぺんを過ぎ、一日が半分過ぎ去った頃。
誰もが壱日が終わりに向かうのを感じている時。
誰もが過ぎる休日を惜しむ時。
それは突然訪れた。
門番をしていた小松田さんが『誰かに』襲われた。
それは上級生がほとんどいない今の学園に大きな波紋をもたらした。
「学園長先生。」
「失礼します。」
「お呼びと聞きました。」
学園長に呼ばれたのは今現在この学園内で最上級生となるとタカ丸、そして喜八郎。
そこで告げられたのは思いもしない言葉。
「学園がどこかの忍者集によって包囲されている。残っている者たちで敵を退けよ。」
脳裏に浮かぶのは鮮やかに笑う後輩たちの姿。
まだ経験の浅い彼らは汚れを知らずここにいる。
だというのに、彼は、この学園の最権力者はその者たちを闇の中へと放り出せと、そう指示したのだ。
「っ、ですが、学園長先生っ!」
「これは決定事項だ。いま、学園には上級生はおろか先生方までほとんどおらぬ。」
「この場所を守るものは、お前たちしかおらんのだ。」
反対の言葉は鋭い視線によって遮られて。
それ以上の反論は許さないとばかりにこの学校の長は襖を指差し「行け」とただ一言つぶやいた。
多くの城とのかかわりを持つこの学園。
多くの優秀な忍者を輩出してきたこの学園。
それでいて何処の城にも屈服することのなき力を持ち。
天才忍者と言われた大川平八郎が長を務めるこの場所。
それは敵に狙われるには十分なものだった。
「タカ丸さん。」
いつもに比べはるかに少ない戦力。
それをどのように使うか。
それを頭で必死に張り巡らせながら自分と同じ立場にいる彼の名前を呼ぶ。
「なに、ちゃん。」
常とは違う張りつめた表情の彼を見て一度ふ、と息を吐く。
彼の経験は、浅い。
一年生よりも。
でも自分よりも人生経験は長い。
それに少しの安堵を覚え彼をまっすぐに見つめて言う。
「食堂に、皆を集めてください。」
じっとを見つめるその目は一度ゆっくりと瞬きをして、そうしていつもと同じようにふんわりと微笑んだ。
「わかった。よんでくるね。」
ぱたぱたと忍びに似つかわしくない音を立てて走っていく彼の背中に先ほどの笑みに勇気をもらった気がした。
「」
いつもと変わらない声色。
いつもと同じ瞳。
それがこんなにも心落ち着かせてくれるものだとは思わなかった。
こつり
額を突き合わせて。
目の前に喜八郎の顔。
「」
その瞳に映る自分の姿。
「私がついてる。ほら、大丈夫でしょ?」
言葉が胸に沁み込むように。
「この学園は私たちで守らなきゃ」
その言葉に深くうなずいた。
※※※
スタートです襲撃編。
/
next
戻る