ドリーム小説
宵闇 弐ノ睦
場所は食堂。
そこには今学園内にいる生徒が皆集まっていた。
「さっき、小松田さんが襲われたっていう情報は聞いたか?」
その言葉にうなずく彼らの顔は緊張と不安で染まっていた。
「おそらくそれをしでかしたやつらがこの学園を狙っているようだ。」
それに驚くものや恐怖で震えるもの。
反応は様々で。
それでも、は告げなくてはならないのだ。
彼らにとって残酷で耐えがたいかもしれない現実を。
「・・・いまこの学園の周りには多くの忍者が潜んでいる。」
その言葉に声を出す者はおらず、ただただ皆の眼が驚愕で見開かれていた。
「先輩方がいない今、この場所を守れるのは俺たちだけだ。」
「先輩、それは___」
黄緑色をまとってつぶやいたのは藤内。
それに一つ頷いて。
告げる。
「実戦の経験がほとんどないことはわかっている。それでも、俺たちはこの場所を守らなくてはならない。」
「もちろんっすよ!」
「先輩、何をしたらいいですか?」
「敵はどれくらいいるんですか?」
まっすぐと前を見て告げた言葉に一番に動くのは一番小さな子どもたち。
きり丸、乱太郎、団蔵の言葉。
11の水色が立ち上がり口々に述べるそれに勇気づけられるように次々と上がる声。
「さすがは組のみんなだねえ。」
タカ丸さんの柔らかな声に、緊張していたその場所は程よくほぐれて。
でも
「だめだ。」
水色の子たちを見やって、告げる言葉。
それにぽかんとわけがわからないようにこちらをみるは組。
まだお前たちを闇に染めたくなど、ない。
「兵太夫、三治郎」
「「!はいっ!」」
名前を呼べばびくりと体を震わせて返事する二人。
「お前たちの部屋の中に確かからくり部屋があったよな?」
「は、はい」
「僕たちが作ったやつが。」
「一年生は皆そこにはいっていろ。」
その言葉に声を洩らすのはその子たち。
「先輩!俺たちだって、戦えます!」
「守ってもらうばっかりは嫌です!」
伊助の、三治郎の言葉が、必死で告げられる言葉が、痛いほど胸に刺さる。
でも、それでも
「だめだ。一年では経験がなさすぎる。本当なら二年だって戦わせたくはない。」
「っ、でもっ」
「」
言い募ろうとする虎若をおさえるように声を出そうとしたを止めたのは、喜八郎だった。
「、この子たちも卵といえど、忍びだよ。」
まっすぐに告げられた言葉に、一瞬声が詰まった。
「今は少しでも手が必要。この子たちを使わない手はない。・・・そうじゃないの?」
喜八郎の正論だとわかってはいる。
一年生を戦いから遠ざけたいのは自身のエゴであり、が勝手に願うことで。
「学園内はもう、安全じゃないんでしょう?それなら自分で動きたいです。」
「先輩、俺たちだってわかってます。」
「覚悟してます」
「俺たちの場所は俺たちで守ります!」
「俺たちを使ってください」
次から次へと放たれる言葉にため息が出そうになる。
しかたない、なんて思いたくはないけれど____
それでも、それでも・・・
ぐるぐるぐるぐる、考えがまとまらない。
こんな時、先輩たちなら、どうしてた?
「ちゃん、落ち着いて?」
混乱するを収めたのはタカ丸だった。
「タカ丸、さん・・・。」
ふわり微笑むその笑みはいつもと同じように見えて、どこか違うその笑みは
きっと、彼の経験のせい。
「それをいうなら僕のほうが忍びの卵としての時間は短いんだよ?」
ゆっくりと紡がれる言葉はに落ち着きを取り戻させる。
「きっと僕の方が役に立たない。でも、ちゃんは僕に隠れていろって言わなかったでしょ?」
まっすぐな瞳はをとらえていて。
「なら、あの子たちを隠すのはおかしいよ。」
ゆっくりと周りを見渡して、水色に微笑んだ。
「ねえ、そうでしょう?」
皆の視線がに集中する。
「卵だからって、まだ小さいからって、見くびらないでください!」
金吾のその言葉に、ゆっくりと目を閉じた。
どうやら彼らはが思っているよりもずっとずっと大人だったようだ。
「一緒に、この場所を守ろう。」
ふわり、小さな子たちが笑った。
だって僕たちだって卵だから、忍びになるためにここにいるんだよ。
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