ドリーム小説








宵闇 弐の漆

















「この中で一番忍びの卵として長い俺と喜八郎が指示を出す。」

学園の見取り図を描いた紙を囲んで言葉を発する。

それに皆がうなずく。

「動くのは委員会単位で、だ。学年ごとでは戦力に大きな差が出るからな。それは避けたい。そしてなによりもこれだけは守れ。」

一度言葉を切って辺りを見回す。

誰もが真剣な眼をしているそれに、ふ、と笑みがこぼれそうになる。

「絶対に死ぬな。」

それに困惑したような顔をしたのは藤内と、作兵衛だった。

「でも、先輩___」

その言葉を遮るように言葉を発する。

「俺たちが目指しているのは確かに忍びだ。」

言葉一つ一つを区切るようにして。

「でも、今、死ぬ必要はない。まだ卵の俺たちはまだ死ぬことを考えるべきじゃない。」


「生きろ」


それに納得したように皆が深く頷いた。


「互いに互いを助け合い、絶対に生き残れ。」


「当たり前っすよ。」

「こんなところで死んだりしません。」

「俺たちの場所は俺たちで守るんです!」

三之助の言葉に続くように孫兵が、左門が口を開く。

「藤内も作兵衛も、同じ気持ちだろ?」

三之助が藤内と作兵衛の首に腕をまわして笑う。

「頑張るぞ、数馬!」

左門が数馬に飛びついて言う。

「わ、左門っ!」

数馬に押される形で倒れそうになる数馬を孫兵が支えて。

そんな姿に緊張していた空気が少しだけ和らいだ。

「先輩たちを胸張って迎えられるように、な。」



「まかせてください!」



その言葉がこんなにも心強いとは思わなかった。







「体育委員は正門の近くに待機してくれ。おそらく一番に敵が来る。・・・やれそうか?」

その言葉に笑みを浮かべるのは体育委員の面々。

「委員会の花形を舐めないでください。」

滝がいない今、体育委員の中もっとも最年長となる三之助が笑みを浮かべていう。

「僕たちだって役に立ちます!」

「頑張ります!」

四郎兵衛と金吾も口々にそう言って。

その頼もしげな姿に頷く。

「作法、生物、その二つで罠を仕掛けてくれ。」

「とっておきをご用意します!」

「立花先輩からこの間教えてもらったのを」

「1年は俺が責任もって面倒見ます。」

の言葉に物騒な言葉を吐くのは作法委員期待の一年。

それをまとめるのは三年である藤内で。

「じゅんこ、いけるよね。」

「先輩、誰を連れていきますか?」

「きみこですか?はなこですか?」

「・・・みんな、ですか?」

「先輩、頑張りましょうね!」

続く生物も様々な飼っている生物について思いを巡らせて。

それを見渡した後に喜八郎を見つめて言う。

「喜八郎、罠に関してはまかせるよ。」

「わかった。」

しっかりと頷いた喜八郎にこちらも頷き返した。

「学園長の庵、硝煙蔵を最重要拠点とする。罠の方はそれを重点的に。でも他の場所にもできるだけ罠を仕掛けてくれ。」

そうして喜八郎含む作法、生物から目を話し次に見るのは金色。

「硝煙倉については火薬に一任する。・・・タカ丸さん、いけますか?」

「まかせてよ。」

年上の同級生はふわり緊張を感じさせないように笑って。

「タカ丸さん俺たちもいますから。」

「僕たちも頼ってくださいね!」

タカ丸に緊張しながらも笑みを向けるのは火薬委員の伊助と三郎次。

それを眩しそうに見つめてタカ丸は言った。

「もちろん、頼りにしてるよ〜」


「それから、タカ丸さん。」

先ほどよりもこわばった口調になったのがわかったのかタカ丸が笑みを引っ込めてをみつめる。

「もしも敵の手に渡りそうになった時は、最後の手段ですが爆破させてください。」

それは危険を伴うこと。

下手すれば爆発に巻き込まれるかもしれないから。

「敵の手に渡るよりもずっといいですから。」

こくりと頷いた火薬委員を見て少しだけ頬を和らげる。

「図書も火薬と共に硝煙蔵をお願いします。」

「わかりました。」

「・・・頑張ります。」

「俺も、全力を尽くします!」

落ち着きを持って図書委員は返事をした。


「保健は学園長の庵に待機してくれ。」

「っでも!」

の言葉に反論するように声を荒げるのは数馬。

「三反田数馬。お前は善法寺先輩がいない今保健委員の代表だ。」

諭すように放つ言葉に数馬は身を縮める。

それに寄り添うように保健委員である乱太郎が、伏木蔵が、左近が立つ。

「皆に何かあった時、お前が手当てをしてくれないと傷を治すことができない。・・・わかるな。」

こくり小さく抱けれども確かに頷くのが見て取れて。

「だからその場所にいてくれ。」

その言葉にようやっと彼は返事を返した。

数馬はぐるり辺りを見渡して告げる。

「みんな、怪我したら絶対に僕らのところに来てよ?」

「・・・直しますから」

「まかせてください!」

「というか怪我するなよ。」

その勇ましい言葉に皆が口々に了承の声をあげた。

「何かあったら皆庵に向かうこと。」


「会計。」

「はいっ!」

元気に声を上げるのは緊張などみじんも感じさせないほどの笑みを浮かべている左門で。

「お前らも体育委員と一緒に正門の近くに頼む。」

「わかりました!」

「足を引っ張るなよ、団蔵。」

「お前こそな、左吉!」

あまり緊張を感じないその会計委員の姿にこんなときだというのに彼らは将来大物になりそうだなあと思わせて。


「それから用具の作兵衛。」

「!はいっ!」

名前を呼べば見て取れるほどに緊張した作兵衛が返事をして。

「用具だけは別々に行動してもらうな。」

「え?」

きょとんした表情に微かに笑う。

「作兵衛は体育、会計と共に門で共に戦ってくれ。」

その言葉に、悟ったように顔を真剣なものに変える。

「お前しかあいつらをまとめられるやつはいないからな。」

「まかせてください。」

そう答える姿に先ほどの緊張は感じられずただ、卵としての覚悟をその場に見せつけた。

先輩〜僕たちはどうしたらいいんですかあ?」

「・・・ですか?」

にょきりと顔を見せる水色三つ。

「三人も保健と一緒に庵に待機してくれ。」

「わかりましたあ〜」

「頑張ります!」

「・・・僕も。」

素直な返事は大変可愛くて。

「数馬、任せるな。」

「はい!」


「学級委員は俺についてこい。」

「「わかりました、先輩」」

頼もしい答え。

二人の後輩を見やり、笑う。




皆の顔を見わたせばその顔はどれも真剣で。



では、動こうか

そう思い立ちあがったとき。



「ちょっとまって?」


声を発せようとしたときにその場に響いた新たな声。

「私たちももちろん入れてくださいますわよね?」

「この場所は私たちの居場所でもあるの。」

「私たちも守るわよ、この場所を。」


声の主は戸口の方。

目を向ければ桃色衣装。

浮かぶ笑みは大胆不敵。

立ちはだかるその姿は美しく。



そこにいたのは数人のくのたまたちだった。

















「有園結縁(ありぞのゆえい)と申します。くのたま3年でございます。罠に関してならばお任せくださいな?」

ふわり微笑んで綺麗な仕草で頭を下げたくのたまはそういった。



話を聞けばくのたまの上級生も6年の実習に参加していて不在。

三年以下の下級生たちしか残っていないとのこと。

おそらく彼女が上級生がいない今くのたまをまとめているのだろう。

彼女らの後ろにいる幾人かのくのたまたちは彼女の後ろで隠れるようにこちらをうかがっている。


「結縁。」

「喜八郎さん。」

その人の名を呼んだのは喜八郎で。

それにやわりとした笑みのまま彼女は笑んだ。

とくり

胸が小さく音を立てた、気がする。

、結縁の罠はすごいよ。」

喜八郎が告げたその言葉に頷く。

「では、有園さん含め罠が得意な方たちは喜八郎と一緒に。それ以外の人たちは数馬たちと一緒に。」

告げればわかったと頷き言われたとおりに動き出す彼女ら。


(つかえるものは使う。それが、忍び。)


改めて皆の顔を見渡し、そして告げる。



「各自、自らの力を出し切って、この学園を守れ。


日が落ちればやってくるだろう。

それまでに罠を仕掛けてしまえ。

相手は忍びのプロだ。

勝とうとは思わなくていい。

ただ、死ぬのだけは許さない。

勝てるとは思ってはいない。

先輩たちが、先生方が戻るまでの時間を稼ぐ。

それが、俺たちの役目。・・・わかったな?」



「了解!」
「わかりました!」
「まかせてください」
「頑張ります!」



口々に聞こえてくる了承の声に、不謹慎ながらも心が騒いだ



心にあるのは大きな不安。


そして微かな期待と興奮。


だった





















※※※
学園の裏は前よりもさらに頑丈な塀。
横には罠ばっかり。
なのでまともに侵入できる経路は正面からだけだったりします。
なので侵入されるのは正面からだけとします。

・・・という手が足りないので言い訳してみたり。
なんだかいろいろある矛盾点はそっと胸にしまっておいてくださるとうれしいです。
オリキャラが一人登場です。
くのたまがでても、名前ありが一人だけなのは管理人が収集つけられなくなるのでだったり。

オリキャラ設定は弐の零に置きました。






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