ドリーム小説










記憶を辿って10  第三接触









「体育館は、どこだ〜!!」


あれ、なんていったっけ。
こういう、以前にも感じたことがあること。

体験したことがあるような。




移動教室。

それは彼らにとってなかなかに大変なものであるのだろうな。

そう思う今日この頃。

その思いの通り、彼は今迷っているようで。

背は平均男子よりも低め。

でも、そのからりとした笑いは異性にまた、同性にも好かれるたぐいであろう。

あっちへふらり、こっちへふらり。

の目の前を少年が走る。

行きたいのは体育館なのだろう。

だが、残念なことにここは体育館とはまるっきり正反対のところにある。

そうしている間にも、彼はさらに全く別の方向へ進みだしている。


「っ、」

目の前を再び通った彼のその腕を思わずつかんだ。

「おお?!」

その衝撃におどろいだように振り向いた彼はきょとん、と首をかしげた。

「なんだ?」

ぱちりぱちりその大きな眼を瞬かせて彼、神崎左門は口を開いた。

「・・・体育館、こっち、違いますよ。」

そのまっすぐな目を見つめ続けることができなくて、慌てて目をそらす。

「・・・そうか!じゃあ、あっちか?」

次いでふらりまた別の方向に進もうとした左門を再び引っ張って違う方向を指さす。

「むこう、」

絞り出すように出した声は、それでも君に届いたようで。

それにそうか、と頷いた彼はにかり、笑った。

「ありがとうな!俺は4組の神崎左門!あんたは?」

「あ、1組の、・・・」

、だな。よろしく!」

そう言って差し出された手。

包まれた手が温もりで麻痺しそうだ。

「私も体育館の方に用事あるから、一緒に行っても、いい?」

握った手を離さないようにぎゅっと握って言えば、彼はもちろんだ、と頷いた。



「なんだろ、懐かしい気がする。」

「え?」

手をつないでが左門を先導する形で進んでいく途中。

ぽつりと漏らされた左門の言葉。

「こうやって、手を引かれてること。ずっと、ずっと前にもあった気がする。」

「っ、」

思わず足を止めて、彼を振り返る。

「なんだろうな。足りない気がするんだ。」


ふわり、風が舞う。


「何かが足りない」



始めてみた彼の悲しげな笑み。

その顔を見た瞬間、の心は決まった。


















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