ドリーム小説
記憶を辿って 第二接触
「___ということだ。何か入りたい部活や委員会があればこれに書いて提出しろ。」
「わかりました。」
放課後担任に呼び出され説明されたのは委員会や部活について。
必須ということではないが、この学校はエスカレーター式で高校にも上がれるので入っておいた方がよいとのこと。
だがは以前も何かしらに所属していたということはなく、また今現在も考えていない。
なぜなら親戚が経営している定食屋を手伝うことになっているから。
いまだに引っ越したばかりでバタバタしているのでもう少し落ち着いてからにはなるが。
「失礼します。」
他にもいろいろ続いていく担任の話を適当な相槌で聞き流していればふいに開いた職員室の扉。
そして聞こえてきた声は耳の奥を擽るもの。
どくんと高鳴った胸を手を握ることで押さえて。
彼も担任か何かに呼ばれていたのだろう。
入ってきた彼の気配が自分の横に並ぶ。
「先生。これ頼まれていた書類です。」
低い、とは言ってもまだ男性とは言い難い高目の声。
そっと横目で見たネクタイの色は黄緑。
「ああ、ありがとう。助かったよ、富松。」
呼ばれた名前にたまらず見上げたその顔は、髪こそ短いがあの頃の面影を色濃く残していて。
突然顔をあげたに一瞬うろんげな顔をして見せて、けれども次の瞬間その顔は消えていた。
「用事はそれだけですか?でしたら俺は___」
踵を返して行こうとした作兵衛に担任があっけらかんと言葉をかけた。
「お前今暇か?」
「は?」
「だから、お前今から時間あるか?」
放課後の授業の終わったこの時間にその質問はいかがなものかと思いながらそのやり取りを見つめる。
「・・・暇じゃな、「そうか、暇か!ならに学校を案内してやってはくれないか?」・・・」
暇じゃない。明らかにそう返された言葉をまるっと無視しながら担任は言い募る。
「・・・へ?」
蚊帳の外状態だったの名が突然出てきたことによりようやっと自身も反応して。
「いえ、私は___」
「この間も迷子になっていたって伊賀崎から聞いたからぞ?」
「そ、れは・・・」
あれはまったくもって、望んで迷子になったわけではなく、かといって、それを弁解したところで聞き入れてはもらえないであろうこともわかって。
「と、言うことで頼んだ。富松。」
、どころか作兵衛の意見すら聞き届けることもなく、担任は笑って二人を職員室から放り出した。
「・・・」
「・・・」
無言状態の作兵衛。
その背中からは何とも言えぬオーラが放出されている気がする。
「・・・あの、」
意を決して口を開いたにその目が向けられる。
「・・・なんだ?」
「ええと、わたし、でしたら校内勝手に探索しますのでお気づかいなく・・・」
いい言葉が出てこず、咄嗟に出たのはそんな言葉。
それにじっと、こちらを見てくる作兵衛。
その視線にいたたまれなくなって目線をそらせばため息。
「いいさ。どうせ本当はこの後予定なんかなかったからな。付き合ってやるよ。」
思いもかけない言葉に、慌てて顔をあげたの瞳に、不敵に笑う彼の姿が映った。
「俺は富松作兵衛。3年4組だ。お前は?」
それは以前何度も見た瞳。
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