ドリーム小説
記憶を辿って11 始動
何をすればいいのか
わからないけれど、動かないと始まらないから。
あの日左門に会って、の心はきまった。
記憶を思い出させたい。
きっと近づけば、お互いのことを知れば思い出せるはず。
そんな不安定な革新に縋るしか今は方法がなくて。
そのためには接触させなきゃいけない。
でも、どうやって?
どん
「わ、」
「っ!」
考えながら歩いていれば不意に衝撃。
慌てて体勢を立て直したが、突然すぎて倒れこみそうになる。
でもそれは目の前の人物によって助けられて。
「すみません!怪我してないですか?!」
少し高めの声。
でも、引き寄せられた胸と掴まれた腕の強さから男の子だとわかる。
「だ、大丈夫、です・・・」
びっくりした胸を押さえながらそろそろと体制を直す。
そうして見上げた目の前の彼に
遠い日の面影が重なった。
「うわ!くのたまだよ、ほら逃げなきゃ!」
別に私は何もしてないけれど、それでも彼らから見たら『くのたま』は恐怖の対象で。
そして同時に私たちくのたまは、いつか彼らに勝てなくなってしまうのだから、今のうちにその感情を植え付けなければいけない。
だから、これでいいのだと思っていた。
思っていたかった。
心の底で痛んだ胸を知らないふりして。
「っわわ!?」
放課後、時間を持て余して木の上で日向ぼっこをしていたら下から聞こえた焦った声。
それを見下ろせば手に竹刀を持った少年が地面に倒れ込むところで。
「っ、」
盛大な音を立ててこけた少年は痛さで滲む涙をぐいと袖で拭きとって、そして立ち上がる。
きっ、と前を見据えて、ふたたび竹刀を構えた。
見えない相手を敵にするように、一歩踏み込み竹刀をふるう。
振り向きざまにそれを払う。
それら一連の動作があまりにも綺麗だと思った。
彼を見たのはまだ彼が幼くて、水玉模様に身を包んでいた時だけ。
「大丈夫!?」
こてりと傾げられた首が色違いの前髪をさらりとながす。
その様を呆けながらみていれば、高い背を傾けて顔をのぞきこまれた。
「っ、」
「大丈夫?」
再度同じ問い。
それに慌てて首を振って肯定する。
「ならよかった。」
本当に、ほっとしたようにふにゃり笑った少年。
「私、3年の。あなたは?」
「俺は1年の皆本金吾・・・え、三年生!?」
驚いたようにのネクタイの色を確認した少年は、慌てて頭を下げた。
「すみません!その、小さいし、可愛らしかったから同い年かと・・・ああ!ごめんなさい!」
いいわけをしようとしたのだろうが明らかに墓穴を掘っている。
それにまた気づき慌てる様が可愛くて面白くて。
「ありがとう」
笑いながらそう告げれば照れくさそうに笑い返された。
「ねえ皆本君。」
「金吾でいいですよ。」
方向が同じだったので一緒に帰っていた途中。
「なら、金吾君。摂津きり丸って子知ってる?」
「摂津・・・?いや、知らないです。」
つぶやいた言葉に少しだけ反応した君。
「一回会ってみてほしいの。」
ねえ、お願い
もう一度あの時のように
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