ドリーム小説



記憶を辿って104  一緒に生きて行こう














溢れだす君の殺気。


体中にまとわりつく。

怖いはずのそれは心地よくて。


じわりじわり


溢れる予感。


急く体をもっともっとと走らせて。




見つけた姿、






常の君ではありえないくらいに取り乱して。


常の君では信じられないくらいに乱暴で。


そう、そこにいたのは常の君じゃなくて



あの頃の、君。




うれしいうれしいうれしい



感情が溢れきって、零れた。



その振り上げられた手をそっとつかむ。



僕に友達がいない?


何をばかなことを言っているのかな?




僕の友は、かけがえのない友は



「ごめんね?僕の友達は、ここにいるんだ。」



浦風藤内、彼だから。


ほろり


零れたその綺麗な滴。

それは僕のためだと錯覚してもいいんでしょう?


そっと笑えば同じように藤内も笑ってくれた。



「ごめん、数馬。」


「お帰り藤内。」


その優しい色は、あの時と変わらないまま。



その手は、僕を引いてくれていたあの時のまま。






「藤内だけじゃないよ。僕も」


「私も。」




後ろから現れた二つの気配も僕の両端に立つ。


みれば孫兵とちゃんで。


ふわり、とても優しげに笑うちゃんと正反対に孫兵は愉しげに笑っていて。



「なあ、お前こそ。さっきまで一緒にいたやつは何処にいったんだろうな?」


くつりくつり

愉しげに開かれた口。


先ほどまで二人いたはずの彼らは、藤内に殴りかかられた彼一人だけになっていて。


「なあ、お前に友達っているのか?」


その言葉を最後に彼は走って逃げて行って。




「伊賀崎くん・・・。」

愉しそうに笑う彼を横からちゃんが突っ込む。



「数馬。僕たちだって友達だからな。忘れるな!」


まっすぐに人差し指を僕に向けて言う。


そのまっすぐな目が、眩しくて。


「忘れたりなんか、しないよ。」


ぽろり零れた涙。


それにぎょっとした表情を孫兵が見せるものだから。

なんだか面白くなって。


「藤内!数馬が泣き出した!どうしたらいい?!」


あわあわと焦った声で助けを呼ぶ。

呼ばれた藤内はぽかんとした表情を浮かべて、そして次の瞬間笑いだした。





「孫兵、大丈夫だよ。なあ、数馬。俺も、もう、忘れたりなんかしない。」






ねえ、藤内。

きっとこれから先、あの時の記憶に蝕まれることも多いと思う。

僕自身思い出してから苦しくて悲しくてやるせなくてどうしようもない気持ちになったことがたくさんある。



でも、それでもね。



もう一度一緒に、生きて行こう

























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