ドリーム小説
記憶を辿って108 かちあった視線、動き出した記憶
滝夜叉丸の手に触れたのは、先ほどから傍観していた三木エ門だった。
背をまっすぐにのばしの前に滝夜叉丸から庇うように立つ。
「なんだお前。突然現れておいて、年下の女子生徒にそんな口のきき方するのか?」
ぱしりと滝夜叉丸の手をたたき落としていい募る。
「男の風上にも置けない奴だな。」
くつりと喉の奥で笑うように声を出す。
の場所からは三木エ門の背中しか見えないが、それでもその向こうにいた滝夜叉丸の眉がひそめられるのが目に入って。
「お前には関係ないだろうが。」
きっぱりあっさり切られた言葉に、三木エ門の気配がいら立ったものになる。
そしてその口から放たれた言葉に、
「っ、ほんっとうにお前はムカつく奴だな!!昔からっ!!」
体中が沸騰するように熱くなった。
「昔、から・・・?」
先ほどひそめられた滝夜叉丸の眉が、今度は怪訝そうなものに変わる。
同時に三木エ門の気配もまた、自分のいった言葉に戸惑うような様子を見せて。
「私は、お前を知って・・・いる・・・?」
小さくつぶやかれた滝夜叉丸の言葉。
それに反射的にその瞳をみれば、戸惑ったような瞳でありながら、今までとは違う光が宿っていて。
「し、らない、しらないぞっ。俺はお前のことなんか知らないっ!」
慌てたように叫ぶ三木エ門でも、その言葉には迷いが見て取れて。
戸惑いと疑惑が溢れるその場所に異なる風を吹き込んだのは新しい人物であった。
「うん。ずっと昔から知ってるよ。滝夜叉丸も三木エ門も、タカ丸さんも。」
ふわり風に柔らかな髪をなびかせて、何を思っているのか測り知れずその瞳で。
彼、喜八郎はゆっくりと姿を現した。
その無表情とされる顔はそのままに、それでも強い意志を宿したその瞳はまっすぐにこちらを見据えていて。
「・・・はぁ」
小さくため息を漏らした滝夜叉丸に喜八郎はむ、とした表情を向ける。
「ぐっ、喜八郎っ?!」
そしてその背中からのしりと全体重をかけるようにのしかかる。
その遠慮のないスキンシップはあの頃みていたものにとてもよく似ていて。
滝夜叉丸の背中にのしかかったままそのまっすぐな瞳を今度は三木エ門に向ける。
「久しぶりだね、三木エ門。」
「おま、え、は・・・」
びくりと三木エ門が体を震わせる。
頭痛でもするのか、その頭に手をあててぐらり、よろめいた。
それに慌ててが立ち上がって三木エ門を支えれば喜八郎の視線は今度はに向いてそしてそれを通り越してタカ丸へと向かう。
「タカ丸さんも。」
喜八郎のその言葉に相も変わらずきょとりとした後ふわあり、とても綺麗にタカ丸は笑った。
「うん。そうだね。喜八郎君。久しぶり。」
ほのぼのとしたその雰囲気についていけないのはが支えている三木エ門。
ぐらり傾ぐ体を支えながらその表情をのぞきこめば顔色はとても悪くて。
「田村くん、」
声をかければゆっくりとさまよっていた視線がへと向く。
ゆらりゆらり
瞳が揺れるのは、恐怖なのかなんなのか。
「ぼく、は、あいつら、を知って・・・いる・・・?」
小さく小さく、近くにいるですら微かに聞こえるくらいの音量でそれはつぶやかれた。
頭痛を抑えるかのように頭を押さえていた手が口元に下がりそうしてゆっくりと視線を滝夜叉丸たちに向けた。
「僕は、」
喜八郎が、滝夜叉丸がまっすぐに向けられる視線に気がついたように三木エ門を見る。
かちり
視線がかちあう。
「うん。私は、みんなをよおく知ってるよ。」
再び述べられた喜八郎の言葉。
「久しぶり、だね。三木エ門。」
繰り返された言葉に三木エ門の口から言葉が零れた。。
「ああ、久しぶり、だな。喜八郎。どうやら僕はいろんなことを忘れていたようだ。」
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