ドリーム小説



記憶を辿って115  俺は迎えに来てくれねえの?











赤く紅く燃える世界。

ゆっくりと手に持った鉄砲の照準を合わせる。

かちり

引き金に指をかけて

刹那

目標は緩やかにその地に伏せた



その一連の動作は、知らないはずのその動作は、俺の体に染みついている。





























「夢前君、呼ばれてるよ。」



クラスの中、中学に入ってできた友人と馬鹿笑いしていれば不意に聞こえた女子生徒の声。

とくにそれに興味はなかったが何の気なしに向けた視線。

その先には前髪ぱっつんのなんとも綺麗な顔をした男子生徒がいて。

その顔はこちらに向くことはなかったけれど、その足はゆっくりとどこかに向かって歩み出して。

到着点とみられる先には、クラスの目立たない男子生徒が一人。

でもなぜかしっかりと覚えている名前の生徒。



夢前三治郎



ふわふわふわふわ

雲みたいにあっけなく笑うくせに、そのしっぽをつかませない良くわからない奴。

でもなぜか、気になって。



たどり着いた先、不思議そうにぱっつんを見上げる夢前。

きょとり、そんな感じで見上げる表情は、次の瞬間劇的に変化する。




「ねえ、夢前三治郎。」




その低すぎず高すぎず、耳になじむ声。




「僕と一緒にからくり、でもつくらない?」



 ずっとずっと、昔から聞いていた声。



その言葉を聞いた瞬間浮かんだのはずるいという感情だった。


「あ、おい、佐竹!何処行くんだよっ!」


今まで話していた友人たちをそのままに、足が勝手に動き出す。

一歩一歩、近づくたびに高鳴る鼓動。


始めに気がついたのは、もともとこちらを見てた三治郎。

その目が驚きに開かれる

そこでようやっと気がついたみたいにこちらをみるぱっつん。


否。


笹山兵太夫。


ぴたりと彼らの前で止まってその瞳をまっすぐに見返す。



なあ、なあ、


瞬時、戸惑うような表情だった兵太夫は俺をまっすぐに見返して、そして口の端を微かに釣り上げて笑った。


そう、あの時つくったからくりを俺に見せにくるときと同じ表情で。





「俺は迎えに来てくれねえの?からくり大好き兵太夫。」




その言葉に今度こそ本当に楽しそうに笑い返した。





「今頃思い出したのかよ、鉄砲大好き少年虎若。」





兵太夫の楽しそうな瞳が、三治郎の困ったような笑顔が、どうしようもなく懐かしかった。






















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