ドリーム小説
記憶を辿って122 あと一人だけなんだ
あと、庄左エ門だけなんです。
頑張ります。
ちかちかと光っていた携帯。
それが伝えたのはそんな短文。
送信主は摂津きり丸。
それを見た瞬間体は動き出した。
放課後。
人が帰りだしにぎわいも少し薄れていたころ。
「三郎先輩っ!勘右衛門先輩っ!」
五人の生徒が残る教室に大声をあげながら姿を現したのは一人の女子生徒だった。
「?どうしたんだ、そんなに慌てて。」
勘右衛門がきょとりと不思議そうに息をきらすを覗き込む。
「大丈夫か?ほら、お茶。」
次いで八左エ門が。
「なんなら豆腐もあるぞ?」
「兵助、それはちょっと・・・」
後ろから聞こえたそれらを無視して、まっすぐには勘右衛門と三郎を見つめた。
「きり丸くんたち、一年は組はみんな思い出してきています。」
その言葉にぴたり、先ほどまでの声は消えて。
皆が皆一様にを見た。
ふにゃり、笑って見せたそれは、今にも泣きだしそうで。
「あと、一人、黒木君だけだそうです、」
だから___
そう続くはずだった言葉は、ふわり、空気に溶け行く。
「中等部の中庭の方だ」
声をあげたのは三郎
走り出したのは勘右衛門
その後ろを追うのは兵助
の背中を押したのは八左エ門。
「さて、可愛い後輩たちに会いに行こうか。」
触れられた背中が熱を伝える。
はやくはやく、走れ走れ、あの場所へと、焦るように、祈るように。
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