ドリーム小説



記憶を辿って124 不運 















不運だね。




そう言われるのは何度めだろうか。

数えるのは面倒になってずっと前に辞めている。


確かに僕は不運なのだろう。


入学式に間に合うようにと一時間は早く着く時間に家を出たのに、家の駐輪場にとめていた自転車のサドルがとられてるし、しかたなく向かったバス停は、工事中。

一つ先のバス停にたどり着くいっこ前の信号で、乗る予定だったバスは行ってしまうし。

走ったところではるか遠くに見えたバスをあきらめて、まだ間に合う時間だから次のバスを待つ。

が、それは来ないし。


なんだかんだでようやっと学校に着いたのは入学式が始まる二分前。

慌てて向かった体育館は中等部ではなくまさかの高等部。

・・・まあ、最後のは自分の不注意で起こったことであっても、入学当日にこんなことが起これば誰でもため息がつきたくなる。

そしてこの体質はいつまでたっても治らないものであるということも理解してきていた。



不運だね


その言葉はもう僕自身を表す言葉であるから、別に何も感じなくなっている。


否、感じなくなっていたというのに。



「不運だなあ、大丈夫か?」

池田がため息をつきながら、僕がばらまいたクラスのみんなの回収したノートを拾ってくれる。


「まったく、またか?不運だな。」

くつくつと楽しげに苦笑を浮かべながら能勢がこけていた僕に手を差し伸べてくれる。



「ふふ、でも川西が不運だから、僕はいつでも川西を見つけられるんだよ?」

時友がふわふわとした雰囲気をまといながら、その小さな体を生かした俊敏さで階段から落ちかけていた僕の腕をつかみ助けてくれる。





なんでだろうか。



こいつらにいわれると、その不運すら不運だと感じなくなってくるのは。





何かあっても、こいつらがいてくれれば何とかなる気がして。

何があろうと、こいつらであれば傍にいてくれるような気がして。



けれど同時に




池田の呆れたような顔も

能勢の苦笑いも

時友の笑顔も




どうしようもないくらいつらいんだ



温かい、この空間がどうしようもないくらい、苦しくて。


縋りついて、泣いて泣いて、泣きわめきたい衝動にかられる。





意味がわからないのに、痛いんだ。

苦しいんだ。









ごめん、迷惑をかけて

























※※※※
左近は最後、結局自分の不運で死にはしていないけれど、自分の不運で人を巻き込んで殺してしまったことがあるとか何とか。




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