ドリーム小説
記憶を辿って125 見知らぬ記憶に浸食されて
最近僕は自分自身の記憶に自信が持てない。
記憶がないわけではない。
失っただとかそういうことでもない。
ただ、曖昧なのだ。
この世界で今自分自身がこうやって生きていることがひどく不可解のように感じるのだ。
ふとしたときチャンネルの合わないテレビのように頭にノイズが混ざる。
それらは記憶にないもののはずなのに、どこか懐かしくて。
それらはいまこの世界で信じられないくらいに残酷で、ひどくて、同時にとてもいとおしい。
そして、混ざっていくんだ。
僕が僕であるということに、段々自信がなくなっていく。
それはとても怖い感覚。
僕が僕であることが、消失されていく。
騒がしい。
図書室では静かにするのが普通だろうが。
ページをめくっていた手を止めてその騒がしい声の発信地を見る。
4、5人の集団が一つの本を囲いながらワイワイと話をしている。
わざわざここでしなくても、教室に戻ればいいだろうが。
うっとうしい。
しかしわざわざそう言うことを言いに行って反感を買うのも後々面倒だ。
となると行動することは一つ。
ため息をつきながら席を立つ。
幸いなことにこの学校の図書室は大層広く、閲覧席も馬鹿ほどある。
つまりあいつらの声が届かないところまで移動すればいいだけのこと。
立ち上がり今まで読んでいた本を手に取り別の場所へと向かう。
まったく。
こんな風に騒いでいるなど信じられない。
あのときであればすぐにでも委員長の怒りが、爆発、し、て、・・・?
そこまで思考を遊ばせていればはたり、気がついたこと。
今、自分は、いったい何を思った?
浮かんだ景色は、いったい、どこ?
ぞわり
背すじが凍る。
それは恐怖。
自分の知らないはずのものが
まるで自分が知っているかのように記憶として存在することに。
本当に、いったいどうしたというのだろうか最近の自分は。
ゆっくりと掌をみる。
一瞬、赤く染まって見えたそれ。
思わず息をのむがもうそこにあるのはただの白い掌で。
知らないはずの記憶は、確かに僕を蝕んでいた。
そんな自分が怖くて怖くてたまらない。
なあ、誰か、この記憶の意味を、教えてほしい
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