ドリーム小説


記憶を辿って135 金色と黒色と















の手から温もりが離れる。

まるで逃げるみたいに三郎次が踵を返す。

四郎兵衛の手を振り払って、久作の手をすり抜けて、左近の視線を無視して




そうして向かった玄関の扉。

大きく開かれたその扉の向こう、見えた青空。

そしていくつかの影。




それを認識する前に、鈍い音と共に三郎次の体は崩れ落ちる。

何事かと皆が慌てるが、玄関の向こう見えたそれにそっと安堵の息。


「・・・何してるんですか?三郎次先輩。」


呆れたような少しまだ高い男の子の声。

久作の手によってさらに大きく開かれた扉の向こう、見えたのは四つの影。


先ほど声をあげた伊助がよく見える、と同時に彼のおかれている状況の不思議さも。

伊助の後ろには黒髪の兵助。

その手は伊助の頬に伸びていてふにふにと楽しそうに頬をつかんでいる。

しかも整った無表情で。

ある意味とても怖い。

そして兵助の艶やかな髪はその後ろにいた金髪が嬉しそうに弄んでいて。

恍惚の表情を浮かべるそれはもはや以上だ。


まだ階段の上にいたきり丸や金吾がの横に立ってその光景をひきつりながら眺める。


「伊助・・・」


金吾の憐みを含んだ声色に伊助がそっとこちらをみて目をそらした。

どうやら伊助が望んだことではないようだ。


ゆるり、艶やかな黒い瞳が三郎次にとどまる。

微かに陰ったその色は、そっと今まで触れていた伊助の頬から離れる。

一歩、小さく踏み出されたそれはでも、彼にとっては大きな意味を持っていて。


「三郎次」


ふわり、伸ばされた腕に包まれた三郎次の瞳がゆらり揺らぐ。


すっぽりと覆われたまだ小さな体はしかし、抵抗を見せることはなくただ茫然とその温もりを甘受して。

小さく肩が震えたのが見えて。

そして


少しだけ見えていた瞳が、色を変えた。


「久しぶりだねえ、三郎次くん。」


ほわほわと笑みを浮かべながらタカ丸が三郎次を撫でれば泣きそうに、でも嬉しそうに頬を緩める姿。


「お久しぶりですね、三郎次先輩。」


ひょこりと兵助の後ろから顔を出した伊助に緩められていた頬が慌てて引き締められる。

それにも苦笑して。


「まったく遅いんっすよね。毎回三郎次先輩は・・・。」

はあ、と大きなため息を吐きながらきり丸はそう告げる。

「でも嬉しそうだよね、きり丸。」

金吾の横からの突っ込みに微かに言葉を詰まらせながら金吾を睨む。


「そういえば、なんで兵助先輩たちがここにいるのかな?」


思い出した三郎次に四郎兵衛たちが嬉しげに飛びつき、三郎次が埋もれていく様を眺めていればふと浮かんだ疑問。




「ああ、僕が説明しますよ。」



ふわり、の耳元で静かに呟かれたそれ。


「っ?!」


突然のことに慌てて振り向けばそこにはとても楽しそうに、笑う一人の姿。


「兵太夫?なんでここにいんだよ。」



そこにはきり丸の怪訝そうな問いにふわり、微笑む笹山兵太夫がいた。











※※※
兵太夫人の家に無断侵入(笑)

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