ドリーム小説









記憶を辿って14  気づかないふりをして














中学三年生

世間では高校受験やらなんやらで忙しいとされる年。

だがこの学校ではエスカレーター式ということで、比較的緩いものだ。

そして、この学校には行って三年目。

仲が良い友人もたくさんいるし、勉強もついていけてる。

家族間での問題も特になく、いまの生活に何ら不自由なく過ごしている。



そう、過ごしているんだ






     胸にわずかにある虚無感を見ないふりして







一組に転校生が来た話は聞いた。

なんだか中途半端な時に来たものだなあと思っていたから。

女子、という情報しかなかったので始め会ったときはわからなかった。

担任ではないが知り合いの教師に頼まれていた用事を済ませるために向かった職員室。

そこで彼女と初めて出会ったのだ。

(もともと、女子と話すのは好きじゃなくて、面倒だと思ったのだけど。)


控え目な子。

始めの印象はそれ。

でも校舎を案内してる間に少し打ち解けてきたみたいで。

途中からは普通に話をするようになっていた。

他の子たちとはちがって、そう言う方向に話を持っていかないのが話しやすかったんだと思う。

以前いた学校のこととか、この学校との違いとか、本当に簡単なこと。

けっこう長い間話してはいたけれど、その間で彼女個人に関しての情報はほとんどといっていいほど入ってこなかった。

だから俺は彼女、のことをよく知らない。

別にそんなに知りたいということもないけれど。


だけど食堂でパンを買って帰る途中、幾日かぶりに見たに普通に声をかけてたことに自分で驚いた。

そのそばにいた、よく見れば手をつないでいた背高のっぽの前髪メッシュ。

一度眼をやればじっと俺を見てきて。

その高い背で見降ろされんのはむっときた。


にじゃあ、とだけつげてさっさとその場を後にする。


あの瞳が少しだけ気になったなんて、気のせいだろう。



明日になれば忘れてる




















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