ドリーム小説





記憶を辿って15  はじめまして?ひさしぶり












あの先輩に言われたから、だから気になってきただけ。

そう自分に言い訳しながら金吾は他クラスに向かった。




「このクラスに摂津きり丸っているか?」


教室の扉に手をかけて中を覗き込む。

教室が座わりとしたがそれを無視して辺りを見回す。

と、


あいつだ


誰ともつるむことなく、窓際の席で外を眺めていた一人の姿を見つけた瞬間

何の根拠もなく、そう思った。


「俺だけど。」



案の定そいつは近づいてきて、俺の前に立った。

さらり流れる髪は女子に羨ましがられるであろう髪質。

その釣り目は怪訝そうに俺を見ていて。

でも、その奥に何かが潜んでいることをうかがわせた。



その目をまっすぐ見ながら、なんて言おうか考える間もなく

言葉はこぼれおちた。


「俺のこと、知ってるか?」


その言葉に、その目を大きく見開いた。

微かにわなないた口元が、なんだかすごく滑稽に見えて。


ああ、俺こいつを知ってる。


不意にそんな言葉が、頭に浮かんだ。

「摂津きり丸。俺は皆本金吾だ。どうやら俺は君のこと知ってるみたいなんだよな。」

それに今度は泣きそうに顔をゆがめてそして、笑った。

「本当に金吾は相変わらずだよな。」


懐かしい。

そう思ったってことは。

その表情、

その声

その名前

やっぱり俺はこいつを知ってるみたいだ。


「なあ!!」

きり丸の後ろから突然かけられた声。

その声の元へ顔を向ければ、黒い短髪の賑やかそうな少年がこちらに走ってきたところで。

振り向いたきり丸自身も驚いたようでびくりと一度体を震わせていた。

「なあ!摂津!皆本!俺もあんたらのこと知ってる気がする!!」

教室内でしかもけっこう大声で叫ぶから、みんなこっち見てるよ。

でも、その言葉に今度こそきり丸の瞳に涙がにじんだから、慌てて二人を連れて教室から離れた。



「お前なあ!あんなとこで叫ぶなよ!」

「悪い!けど二人の会話聞いてたら言わずにいれなくてさ!」

にかり、太陽みたいに笑うからなんだかこっちまで楽しくなってしまった。

ふ、ときり丸を見たらぼろぼろと無言で涙を流してるものだからぎょっとして。

「俺は加藤団蔵!よろしくな!きり丸、金吾!」




それに、まるで心の枷が外れたみたいに記憶が押し寄せた。


溢れる記憶はつらいものであったと同時に、かけがえもないくらい愛おしいものでもあった。



ああ、これで本当に言える。

心の底からの言葉で言える、二人に。

みんなに



「久しぶり、きり丸、団蔵。改めてよろしく。」
















うちの金吾は男前






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