ドリーム小説


記憶を辿って145 この世界で生きている











僕はこの世界を好いてはいない。





そう気がついたのは、いつだったのか。



別にこの世界が嫌いだとか、そう言うわけではなくて、ただ性に合わない。

自分がまるでこの世界での遺物ように感じていて.


異物ではなく遺物。


世界が、僕を置き去りにしたまま進んでしまっているような、そんな感覚。





何一つ、合わない。


自分に似合うものが、何もない。


そんな状態の中。



ただただ明日が来ることに、期待などできていなくて。


ただただ今日が終わることに、何の感情ももてなくて。



生きているのではなく、ただ、息をして、存在しているだけだった。








でも、中学に入って、少しだけ、明日に希望が持てるようになった。


あの場所で、みたことなかったはずなのに、懐かしくてたまらない人たちに会ったから。


知らないはずだったのに、気がつけばこの瞳から滴が零れていたから。


それを優しい手が慰めるように拭いてくれたから。



「怪士丸」




柔らかな声で、穏やかな顔で、意地悪げに笑って、僕を呼ぶものだから、







僕はその時ようやっと、息をして、生きているのだと感じたのだ。








僕はこの世界を好いてはいない




そして、この世界も僕を好いてはいないんだ。







それでも、僕はこの世界で息をして生きている。






















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