ドリーム小説


記憶を辿って148 思うがままに行動した結果














小平太にようやっと離してもらえた四郎兵衛と金吾は息を整えてふにゃり、声を漏らす。

「し、死ぬかと思いました・・・」

「ふふふ、僕もだよ〜」

ようやっと回復したのか、金吾が四郎兵衛に抱きつきながら答えた。四郎兵衛もそれを先輩らしく優しく抱きしめて答える。

「・・・でも、嬉しいねえ。」

「・・・はい。」

それでも思うことは同じで。

ふにゃり、笑いあった。





「・・・竹谷先輩を助けるべきか否か・・・。」

「う〜ん、被害受けたくないからこのままでいいんじゃないかなあ・・・?」

しかしながらそんな感動的な場面の横では小平太に捕まったままの八左衛門を助けるかどうか、生物委員会の下級生による小さな会議が開かれていて。

「・・・放置する?」

「「賛成。」」

とまあ、あっさりと放置の方向に決まったようだが。





「久作。きり丸、怪士丸。」

雷蔵がにこにことしながら後輩たちの名前を呼ぶ。先ほどの三郎と同じように両腕を広げて満面の笑みだ。

「おいで?」

ふんわり、柔らかく笑う。

「雷蔵先輩・・・」

「・・・。」

それにゆっくりとではあるがきり丸が、怪士丸が近づいていく。ぎゅう、とその体に抱きついて、温もりを味わうようにしがみつく。

「ほら、久作も。」

一人動こうとしなかった久作を促す雷蔵。それに困ったような戸惑うような久作。
再度促されてしかたなく、雷蔵に近づいて、そうして三人のそばにたつ。
一年の二人のようには抱きついていかないが、雷蔵のそばでその袖をそっとつかむ。その控えめさに雷蔵の顔はさらに破顔して。

「あーもー、みんなかわいい!」

その腕をつかんでぎゅう、と三人まとめて抱きしめた。








「兵助先輩。」

壁に掛けられたメニューの「豆腐、冷や奴、揚げ出し豆腐、他あります。」というところを眼見していた兵助に
控えめにかけられる声。そこには困ったように笑う伊助とむすりとした三郎次。

「伊助、三郎次」

腕を伸ばしてその頭を軽く撫でてやればふにゃり、笑う伊助。照れたようにそっぼをむく三郎次。

「先輩、以前もやっていたみたいにまたお豆腐パーティでもしましょう?」

伊助たちの方向を向きながらも、ちらちらとメニューに視線をやっていれば、伊助がにこにこと、仕方がないなあ、とでもいうように笑う。

「じゃあ、たくさん作るな。」

「僕豆腐ハンバーグが食べたいです。」

「任せろ。三郎次は?」

「・・・僕も強制参加ですか・・・」

三郎次の声はどこか疲れていて、だけれども嫌そうに顔をしかめながらも否定の言葉は出さなくて。

「僕はなんでもいいかなあ〜」

「っわ、」

突如聞こえてきた新たな声。金色の髪をふわり動かしながらへにゃり、笑うタカ丸。
いつのまに来ていたのか、三郎次の後ろにいて、のしり、と三郎次にもたれ掛かる。

「タカ丸さん・・・重い・・・!」

「あ、ごめんねぇ?」

謝りながらもあまりどくきはないのか、少しだけ姿勢を変えてそのまま三郎次を抱きしめている。

「みんなよんで、みんなでしたいねえ。」

にぱりにぱり、その邪気のない笑みは周りに伝染していく。






「ええと、本当そろそろ離さない?兵太夫君、喜三太君。」

「い、や、で、す。」

「え〜先輩柔らかいし暖かい〜。」

にっこり、にぱり、そんな笑み。

その笑みは本当に邪気がなくて簡単に振りほどくことができずは再びため息をついた。







「・・・」

「ちょ、まごへ、たすけ・・・」

店に入ってきた瞬間広がる謎の状態に、どん引き状態の孫兵。
その目が向くのは元委員会の先輩である八左衛門。
ぐわしぐわしと小平太に捕まったまま息も絶え絶えである。
それをまるで虫でも見るかのように乾いた瞳で見る孫兵。
助けをもとめてくる八左衛門をそのままに、店の奥、兵太夫と喜三太に捕まったままのに目をやる。

「なにしてるの、。」

「・・・助けて、伊賀崎君。」

あっさりと八左衛門を見捨てて、孫兵はの元へ。
へばりつく二人に目をやって、しばし考える。

「笹山。もう藤内がくるぞ?」

その言葉に、ぱっと驚きの表情を見せる兵太夫。

「本当ですか!?仙蔵先輩!聞きました??藤内先輩がこられるって!!」

いままでの抵抗は何だったのか。さらりと離れて仙蔵へとむきなおる

「山村。そろそろ離してやれ。」

へにゃりと困ったような表情をしながらもおとなしく離れる喜三太。
だから先ほどまでの渋りようはなんだったのか
こちらもあっさり離れる。

「・・・ありがとう、伊賀崎君・・・。」

ようやっと解放されてほっと息をつく。それにため息を返す孫兵。

「おまえいつでも誰かしらにへばりつかれてるな。」

「本当にね・・・」

あきれたような声色ではあるが、それは以前のようなとげとげしさを含むことはなく。

「・・・それより八左衛門先輩を助けなくていいの?」

「とばっちりを受けたくないから。」

まったくもって敬いを感じられない。

「孫兵先輩ー!!」

と話していた孫兵のところにぱたぱたと走ってくる三つの影。

それはころころと転がるように近づいてきて、その勢いのまま孫兵へと突進する。

「う、わっ」

「わ!?」

はっきりいって、あまり体格がいいわけではない孫兵。それに小さいとはいえ、三人が飛びつくわけで。
見事に体勢を崩した孫兵はその後ろにいたをも巻き込んで後ろへと姿勢を崩す。

「おやまあ。」

ふわり、体に走るはずだった衝撃はゆっくりと吸収されて。見れば銀色の髪がふわふわと揺れて、聞きなれた言葉が耳に届く。

「楽しそうだねえ、。」

見た目は細くて頼りなく見えるのに、いとも簡単にと孫兵、それから三人の一年生を支えてくれていて。


支えてくれたその腕に甘えるようにもたれ掛かる。
いつもとは逆の状況だがそれは心地よくて。


喜八郎が背中にいて、前には孫兵。
そして一番前は虎若、孫次郎、三治郎。
折り重なるようにもたれ掛かっていたそれをひょい、と助け出したのは三木ヱ門。
仕方がないなあ、と苦笑しながら一人一人しっかりとその足で立たせて。

「三木ヱ門先輩。」

その後ろからひょこり、団蔵が顔を出して三木ヱ門にへばりつく。

「なんだ?団蔵。」

「潮江先輩は思いだしてないんでしょうねえ」

ぽん、と投げられた言葉に三木ヱ門もそのように思っていたのだろう。

「そうだろうな。」

困ったように答える。

「だって潮江先輩ですもんねえ・・・」

「ああ、潮江先輩だから・・・」

悟ったように遠くの方を見る二人。
学園一忍者していると言われていたあの人はそんな人なのか。
あまり深いつきあいを持っているわけではないはそれを聞いて少々驚く。

「悪いな。」

ようやっと体勢を立て直せた孫兵はほっと息を吐きながらに声をかけて。
それに平気、と返してもしっかりと足を着ける。

「喜八郎先輩・・・。」

足を着けたのはいいが、今度は逆に後ろからがばりと体重をかけられる。
なれているとはいえど、なかなかにこの体制はきついのだ。

「藤内、来た。」

入り口を見て、ほわり、喜八郎の空気がゆるむ。
同時に開かれた扉。
そこに現れた藤内、そしてその後ろにいた数馬が中の人の多さに驚いたように動きを止める。

「藤内先輩!」


「うわっ!?」

「わっ!!?」


がばちょ

藤内に全力で飛び込んでいく兵太夫。
それに体勢を崩す藤内。
・・・の後ろでとばっちりを受ける数馬。さすが不運。


「数馬先輩っ!?」

数馬の声が聞こえたのか、保険委員の面々が驚いたように声を上げる。
そして外で倒れる彼に駆け寄ろうと、し、て、机に引っかかりいすに引っかかり、小平太に引っかかり。
残念ながらたどり着ける様子が見られない。

不運の連鎖がおこっている。

「うわ〜スリル〜。」

先ほどから伏木蔵はそれしかいっていない。

「大丈夫か・・・?」


かちり、突然店の外から響いてきた声に、皆の動きが止まる。
次いで皆してそちらを見るものだから視線をいっせいに向けられた人物が微かにのけぞった。
倒れこんでいる数馬を助け起こして、そのまま店の中に視線を走らせたその人は、ぴたり、一か所に目を留める。

「留三郎、先輩・・・?」

向けられた視線は小さな三人に。
駅前で話しかけられたその三人に向けられて。

ゆっくりと数馬から手を離して、足を店の中に踏み入れる。

一歩一歩ゆっくりと歩んで、そうして三人の目の前に立って。

手を伸ばそうとして、戸惑う。

「留三郎」

それの背中を押したのは、先ほどまで八左衛門を弄んでいた小平太。

「お前の体が覚えてる。本能に任せろ。」

その言葉が留三郎に届いた瞬間、彼の体は動き出して。

「わわ?」

「うわあ」

「・・・!」

伸ばされた手は、思い切り三人を引きこんで、強く強く、抱きしめた。

「・・・留三郎先輩??」

控え目に喜三太が名前を呼べば、その腕はさらに強くなって。

「・・・僕たちのこと、わかりますか?」

恐る恐る、平太が言葉を漏らす。

「・・・」

堪えない留三郎に、ふにゃり、しんべエが困ったように視線をさまよわせた。


「平太、喜三太、しんべエ・・・。思い出したぞ。」

ゆっくりと、その口から呼ばれる自分たちの名前に、虚をつかれたように驚いて。

そうして三人はふわり、笑った。


「「「留三郎先輩!」」」







あの時、駅で会った時とは全く違うその笑顔。

それらが愛しくて仕方がないとでもいうようなその笑顔にほっとして。


そうして、そこで気がついたことがある。


「・・・喜八郎先輩。」

「ん?何、八神。」

「滝夜叉丸先輩は?」

後ろからへばりついている喜八郎に問うのは、体育委員長のそばで困ったように笑う先輩の所在。

「・・・滝」

とたんむすりとした気配。
体をねじって喜八郎を見上げれば、その表情は無表情ながら不満であふれていて。

「どうしても、用事があるあらいけないって。」

ふい、と視線を外していじけるように言葉を放つ。

「私よりも大事なものがあるんだって。」

完全にすねる喜八郎。このような姿を見てるとどうしても先輩だとは思えなくて、ぽんぽん、と頭を撫でてやった。







※※※※※※※※

絶対誰か忘れてる。そして間違ってる気がする。
難しかった・・・。
もうしばらくはこんなに一気には出てこない・・・!はず。






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