ドリーム小説
記憶を辿って159 俺がいてはいけない世界
俺が今ここにいることは
俺が望んでいることではない
俺が今いるこの場所は
俺がいてもいい場所ではない
理由はなくともずっと感じていたこと。
この手を、一度も綺麗だと感じたことなどない
洗えど洗えど、この手は見えない赤で染まりきっている
この手でいったいなにをつかめると言うのか。
この濁りきった二つの眼でいったい何が見えるといのか。
幾度も幾度も、悪夢のように繰り返し見るその場所は
黒く黒く、赤く紅く
闇色に染まるそれは、笑いが出るほど俺に似合っていた。
周りにいるものは、何一つ自分に益を与えるものではなく
周りにいるものを、壊さなければ俺が生きれない
そのために、いくつもいくつも人としてあり得ないことをして
何度も何度も、死なないために生きる理由もないのに、あの世界に存在していたかったんだ。
その理由など、とうに忘れたけれど
俺が生きているのはこの世界だと、知っている。
理解は、している。
それでも、何度も何度も、繰り返されるそれらの悪夢が
俺を現実から遠ざける。
この世界が、夢で、本当は俺はいまもまだあの闇の中で独りきりで生きているのだと。
錯覚をさせられる
俺を呼ぶ柔らかな声は、ただ俺を混乱させるだけの存在でしかなくて
小さなころからことごとく、差し出される手を振り払ってきた俺は、
誰の手も、知らないまま
その温もりに縋る術も持たないまま
今この場所にいる
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