ドリーム小説


記憶を辿って161 弱くてごめん














長次が、私を思い出してくれて。

大事な大事な後輩たちが、俺の名前を呼んでくれて。


溢れる皆の笑顔に、勇気をもらった気がしていたんだ。


あの時までは





「七松!お前が俺に何を思い出させたいんだか知らねえけど、俺は別にそんなもの望んでねえ!
いい加減に俺に付きまとうのをやめろ!迷惑だ!過去だ前世だ?!
笑わせんじゃねえ!それじゃあ今の俺は何なんだ?
俺は今現在生きていることになんの後悔もしてねえ、俺の世界をひっかきまわすんじゃねえ!!」


掴まれたままだった胸ぐら。

最後の言葉を言い放つとともに、私の体は放られて。

去っていく文次郎に何を言うこともできず。

嫌われてしまった

今までは深いところにまで踏み入らなかったから、まだ時間の共有を許されていた。

でも

今度こそ、私は文次郎に嫌われてしまった。


大声で泣きわめいて、文次郎の馬鹿野郎と叫びたいのに

子供のようにだだをこねて、文次郎を引き留めたいのに。




カラカラに乾いた心は、それらを許してはくれなかった。




「・・・小平太先輩。」

かけられた言葉、

それは

全ての元凶


のせいだ。」


「・・・」

「文次郎に嫌われた。」


「・・・」

「おまえの、せいだ。」


何も帰ってこない返事。


わかっている、わかっている、


お前は何一つ、悪くはないと



理解している



それでも、



言葉を絞り出す。

「お前などに、出会わなければよかった」


それらは何一つ、を傷つけないことはないだろうに


鋭いくないで、ひとつ、ふたつ、


小さく小さくつくりだした傷は、何度も繰り返されることで深く深く、根付いていくのに


知っているのに


「こんなことになるなら、前のままでよかったのに」


溢れる言葉は、とどまらず。


怖くて怖くて、がどんな表情をしているのか、知るのが怖くて。


まるで防御壁のように言葉で守る。



なんて、大嫌いだ」



自分を、守る




だと、いうのに





ふわり


体に回った温かな温もりは、そんな私の心を柔らかく解すように


体全体に広がった温もりが、私を落ち着かせるように。


「ごめんなさい、いらないことをして」

ゆるり、

広がる謝罪の言葉


違う、が悪くなどない


わかっているのに言葉は喉に張り付いたまま



「でも、お願いです」


柔らかい声色なのに、ひそむは懇願



怒りでも、悲しみでもない


「思い出したことを、後悔しないで」



優しい、優しい言葉



「ここにいる七松小平太先輩も、あの世界での七松小平太先輩もすべてをひっくるめて、先輩なんです」




ただ、私を落ち着かせるために温もりを与えて

ただ、私を勇気づけるかのように言葉を発して



まるで、全て痛みは自分で受け止めるとでもいうかのように




母のような庇護


どうして?


年下のくせに


そんなにも小さな体で精一杯私を、私たちを守ろうとして。



本当は知らないと放っておける距離にいたはずなのに。


何一つかかわらないで生きていくことだって選択できたはずなのに



それでも、見捨てずにこの場所にいてくれてることがどうしようもなくうれしくて。


後ろからのぬくもりを、振り向いて、力いっぱい抱きしめる。


「っ、小平太、せんぱっ、」


小さく痛みをこらえる声。

でも、ごめん、もう少し、もう少しだけ

その温もりで安心するために


ぎゅう、とさらに力を込めた




























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