ドリーム小説


記憶を辿って167 やってきました体育祭?














”明日体育祭を行う”





学校に着いた時、ざわざわと掲示板の前に人だかり。

何事かと近づいていけば、そんな文字。

「はよ、。」

あっけにとられるの耳に聞こえてきたのはあいさつの声。

慌てて振り向けば、眠たそうな表情であくびをする三之助の姿。

「おはよう」

返事を返せばぼへっとした顔が掲示板に向けられていて。

「・・・体育祭?」

「・・・うん、体育祭。」

指をさして何これと尋ねてくる三之助に苦笑して返事をする。

「・・・また理事長?」

「だろうねえ。」

この学園に存在しているらしい理事長先生。

だがしかしその姿を見たものは誰もおらず、本当に存在しているかどうかもあやしい。

時折このように突飛な提案をしては学校中を混乱に巻き込む、これだけを聞けばお茶目な人だ。

だがしかし、それをきいてあのお方を思い出すのはあながち間違ってはいないように思う。

「まあ、授業がなくなるのは嬉しいけどな。」

ぐう、との隣で伸びをする。

もともと背が高い彼が伸びをするとさらに背が高くなる。

上から見下ろされるその感覚。

逆に見上げ返せばばちり、目が合う。

「わわわ、」

ぐりぐりとなぜか頭を撫でられて目が回る。



ふ、とその三之助の視線がではないところに向けられる。

それを辿ってもそちらを見れば、ぴたり、一定のところで視点が定まる。

「・・・」

をなでていた手が止まり、その温もりが離れ行く。

「・・・次屋君。」

名前を呼べどこちらを見ることもないそれはひどく遠くて。

 富松作兵衛

視線の先、その存在は、彼にとって忘れようもないほど大事な人のはずなのに。


あなたはいま、誰を見ているの?


くるり、踵を返して、校舎内へと足を向けた三之助。

「つ、次屋君!」

思わずその腕に、触れた。


瞬間



ぱしり、払われた手。

どくり、心臓が恐怖で動きを止めそうになる。


「ごめん、今お前に構ってやれるほどの余裕ない。」


冷たい言葉。

こちらに向けられることない視線。

ただその背中がひどく強い拒否を示していることだけが、現実的で。



「おはよう。・・・っ、どうしたんだっ!?」

ぽん、と肩に手を置かれて、その拍子にぽろり、瞳から雫が零れた。

「え、ちょ、もしかして俺のせいなのか?!」

肩に手を置いた張本人である作兵衛が自分のせいかとあたふたとする。

「っ、ちが、これは」

慌てる作兵衛に必死で違うと告げれば、その作兵衛の瞳が、きっ、と鋭いものになる。

「・・・あいつか?」

その視線が向けられた先は校舎。

先ほどまで話していた三之助が向かった方向。

「さっき話してたあいつが泣かしたんだな。」

じわり、辺りに広がる怒り。

それが自分のせいだと感じても、思わずとどまってしまって。


「っ、まって、ちがう、からっ!!」


ふ、と気がつけば動き出していた作兵衛の腕をつかむ。


「っ、あいつが泣かしたんだろ!?」


なぜ他人であるはずの作兵衛がそんなにも怒るのか、その理由をつかめないまま必死でひき止める。

「違う、私が勝手に泣いただけ、だからっ」

ぐっと掴んだ腕に力を込めれば戸惑いながらも作兵衛は止まってくれて。


「・・・ならいいけど。・・・あーもー!泣くなよっ!」


戸惑ったように、困ったように視線をさまよわせて。

作兵衛がぐっと至近距離に近づく。

思わずそれにのけぞれば、ぐいぐいと目元を作兵衛の袖で拭かれて。


「女に泣かれると、どうしたらいいかわかんなくなんだよ!」


ばつが悪そうに、そんなことを述べるから、なんだか逆に笑えて来て。


「ごめん、ね。」

ふにゃり、笑えばほっとしたように笑い返された。


「っ、わ!?」

と、突然作兵衛が前のめりになる。

何かと思ってそっちを見れば、作兵衛の後ろから何故か左門が飛び出てきた。



「おお、すまん!急いでてな!」

作兵衛にぶつかるだけぶつかっておきながら、軽く謝るだけで再び走り出す。

先ほど収まったはずの怒りが違う形で放出されて。


「待ちやがれっ!!」


突然叫んで走り去って行った左門の後を追おうと作兵衛が一歩足を踏み出した瞬間、それを止めたのは第三者

「おっと、」

「うわ、すまねえ」

今度ぶつかったのは作兵衛。

ぶつかられたのは孫兵で。


「いや、大丈夫だが・・・どうかしたのか?」


思わずつんのめってこけそうになった作兵衛の腕を孫兵が掴む。

それに礼を言いながら作兵衛の視線は先ほど左門が走り去って行った方向に向けられて。


「ちょっとむかつく奴がいやがったから、制裁を加えようかと。」


自分の足でしっかり立って、そう告げた。


むかつく奴


その単語に驚くと同時に、胸が、ぐっと痛くなって。


「・・・?」

思わず胸元を握り締めて、ぐっと唇をかみしめれば孫兵の視線がこちらに向けられて、微かに驚いたようなぎょっとしたような表情をする。


「っ、また泣いてるのか?!t、ちょ、やっぱり俺が悪いのか?!」


覚えていなくてもいい、そんなこと、言えない


ぼろり、零れだした感情。

留めるすべのわからないそれ。

ぎゅうぎゅうと胸を抑えることで痛みを緩和させようとするけれど、それは効果が見えなくて。


「・・・富松。こいつのことは僕に任せておいてくれないか?」

あわあわと再び焦りだした作兵衛に孫兵がそう告げる。

そうして、く、との腕は引っ張られて。

ぼろぼろぼろぼろ

止まらないそれらを見られないように下を向いて、手を引かれて歩く。


「伊賀崎、任せた。」


作兵衛のその言葉をうしろに、は孫兵に連れられてその場所を後にした。
































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